(a) 安全でない航行
ここで、「安全でない航行」とは、SOLAS条約をはじめとする海上での安全に関する基本原則に明らかに違反する条件で、船舶を運航させるか、または乗客を国際航海で運送する人的・物的設備を備えず若しくは免許を受けていないため乗船・下船の条件も含めて乗船者の生命若しくは健康に重大な危険を生じさせるように、船舶を運航させることとされている(19)。
(b) 無国籍船への執行
まず、密航者の輸送に伴って安全でない航行を行なっていると疑うに足る合理的な理由のある船舶が、国際法上無国籍船であるかまたはそれと同視される場合には、各国は必要な安全性の検査を実施しなければならず、検査の結果安全でない航行を行なっていることが判れば、関係国内法と国際法とにしたがって適当な措置を行うものとされた(20)。
(c) 外国船への執行
つぎに、密航者の輸送に伴って安全でない運航方法を実施していると疑うに足る合理的な理由のある船舶が、国際法にしたがって航行の自由を享受している外国船である場合は、当該船舶を発見した国は、旗国に通報し、登録の確認を行なうことができ、登録の確認がなされた場合には、乗船し、安全性の検査を実施し、安全でないことが判明したときには船舶・人・積荷に適当な具体的措置を採ることの許可を、旗国に対して求めることができる。旗国はその許可を与えることができる。乗船、安全性検査、または船舶・人・積荷に具体的措置を実施した国は、速やかに旗国にその結果を報告しなければならない(21)。海上における密航者の輸送に伴って、船舶が安全でない運航方法を実施していることが明らかになった場合には、直ちに、旗国または登録国の当局に、検査結果の具体的事実を報告し、以後の具体的措置について旗国・登録国の当局と協議しなければならない(22)。各国は、関係国内法と国際法にしたがって、適当な措置を採らなけれぱならない。船舶に対する具体的措置は環境を損なうものであってはならない(23)。船舶が港にあるときは、出港させてはならない(24)。