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3 人を密入国させる行為に関する国際的動向

(1) 安全性

(ア) Maritime Safety Committeeの勧告

船主や船長が、密航者の存在を知って、これを運搬している場合については、その行為の犯罪性と、密航船に載せられて運搬されている密航者の安全性との二つの側面から、国際的な取り組みが進んでいる。

まず、安全性の面では、ビジネスとして密航者を大量に密入国させる場合には、多くの場合、船籍登録もない漁船を転用しただけの堪航性を備えない船舶が運搬に使われて、密航肴の生命が失われる事件が発生している(15)ため、航行の安全基準について国際的なルールを確立してきたIMOが、安全性に欠ける船舶の運航に対する規制の面から、一定の措置を実施している。まず、第20回総会で、密航者の運搬に用いられている場合も含めて安全でない船舶の航行が行なわれるのを防止する一環として、各国の協力と一層の防止努力、情報の収集・提供を求めた。安全でない船舶は抑留しIMOに報告することを、各国に要請するとともに、安全性を確保するために条約づくりに取り組むことも決議した(16)

ついで、総会決議に基づき、1998年末に、海事安全委員会MSCは「海上における移民輸送に伴う安全でない航行を禁圧するための暫定的措置」を各国に回付した(17)。これは、各国に以下に述べるような措置を採ることを勧告するもので、各国に履行を義務づけるものではなく、国連国際組織犯罪条約および人を密入国させる行為の防止に関する議定書(不法移民議定書)(18)が効力を発生するまでの間の暫定的なものではあるが、その措置の内容は基本的に議定書と同様であるため、その間の国際的な実務のガイドラインとなる。

(イ) 暫定的措置の内容

 

 

 

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