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実際上は、同水域の地理的な位置、および同水域で操業する第三国船は、漁獲割り当ての交換によって入域するEC船および伝統的な漁獲実績によって操業が許される船舶が操業しているにすぎないため、無免許船の問題は生じにくいと思われる。グレー・ゾーン協定は有効期間1年とされ、その後は更新可能とされているが、現在までのところ毎年更新されており、協定の解釈についても、実施についても目立った問題は生じていないと言われる。(20)

以上の2つの事例は、いずれも境界画定を行わずに、暫定的に一定の水域を共同で使用し、管理する点で同様の制度である。どちらの場合も、当該水域においては他方締約国漁船については管轄権を行使しないとすることで、管轄権の重複による抵触を解消している。立法管轄権の重複による両締約国間での規制の矛盾は、漁業共同委員会による勧告を各締約国が受けいれることによって、避けようとされているが、ノルウェー・ソ連間の協定が共同委員会の勧告を強制的なものとしているのに対して、コロンビア・ジャマイカ間の協定では、協定の文言上は、共同委員会の権限が強制的なものではないため、抵触が生じる可能性がある。

いずれの協定にも当該水域における第三国漁船の操業を前提とした規定があり、いずれかの締約国の許可等にもとづく合法的な漁獲に対する管轄権は許可を与えた国のみが行使するものとされている。無許可の第三国船の取締りについては、コロンビア・ジャマイカ間の協定には明文の規定がないが、ノルウェー・ソ連間の協定には、グレー・ゾーン水域ではいずれの締約国も執行権行使が可能である旨の規定がある。

 

5. おわりに

新日韓、日中漁業協定における執行措置に関する問題点は、両締約国の国民、漁船に対するものとしては、旗国主義による取締りしかできないことから、いずれかの締約国が自国民、自国船に対して十分な執行措置をとらない場合に、保存管理措置が実効的でなくなる可能性があるという点であった。この問題は、協定の規定から見る限り、漁業共同委員会で取締り方法についての交渉を行って、解決方法を見いだすことになると思われる。

 

 

 

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