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以上の事例は、いずれも2国間で境界画定を行ったうえで、相互の入漁を認めるものである。これらは、歴史的な漁業実績の保証、あるいは主張が重複する水域で境界を画定する際に生じた関係国間の利害を当該水域で優先的な漁獲割り当てを行うことによって均衡させようとするものである。入漁条件等の設定、執行の権限はそれぞれの水域が属する国にあり、他方締約国との間での条件設定に関する交渉についての規定はあっても、常設的な共同委員会等の設置はない。そのため、共同水域としての性質よりも、締約国間相互の排他的経済水域の一部の水域を限定して、相互に優先的な入域を保証したという性格が強いものといえる。執行権の行使については、境界画定が行われているため、各々の締約国の水域で排他的な執行権が行使されることになり、問題が生じる余地はない。

 

(2) 境界画定を欠く共同利用水域

日韓、日中新漁業協定と同様の、境界画定をせずに共同利用を行う水域を設定して、漁業共同委員会等による利用条件の設定等を規定している例は2つある。

(ア) コロンビア・ジャマイカ 海洋境界画定協定(12)

1993年に締結されたこの協定の対象水域は、相対する両締約国間のほぼ中間線で境界画定を行った部分と、共同制度水域(joint regime area: JRA)と呼ばれる共同水域を設定した部分とに区別される。

共同制度水域は約4,500km2のほぼ三角形の水域である。この水域は、協定によってコロンビアおよびジャマイカ固有の排他的経済水域とされた水域と接しているのと同時に、ホンジュラスおよびニカラグアの水域とも接している。コロンビアとホンジュラスとの間では海域境界画定が1986年に合意されているが、ニカラグアとコロンビアとの間では、島の領有権に関する争いがあり、海域境界についても合意がないため、共同制度水域の外辺の一部はニカラグアとの間の合意のない不確定の境界をなしていることになる。(13)

両締約国は、共同制度水域で次のような活動を行うことができるものとされる。(3条2項)

 

 

 

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