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それらは大きく分けて、明確な境界画定を行った上で、調整しきれなかった利害を一定の水域を共同利用することで解決しようとするものと、日中韓の3協定と同様に、主張が重複する水域に共同利用を行う水域を設定して共同利用の制度を暫定的に樹立しているものとがある。ここではそのような共同利用が行われている水域の制度を概観する。

 

(1) 境界画定を伴う共同利用水域

海域の境界画定を行ったうえで調整しきれなかった利害を一定の水域を共同利用することで調整する例は以下のようなものがある。

(ア) コロンビア・ドミニカ共和国 海域・海底境界画定および海事協力協定(8)

この協定では、両当事国に属する海域・海底共通の境界を中間線で画定したうえで、境界周辺の一定水域に共同科学調査、共通漁業開発水域を設定している。この水域では両締約国は次のような協力を行うものとされている。(4条)

a. 締約国民相互の入漁の承認

b. カツオ等の両国の水域を回遊する生物資源に関する調査結果の他方締約国への通知

c. 一般的に認められた科学調査に関する協力

d. 水域内で漁獲された魚種と漁獲量の他方締約国への定期的な通知

e. 第三国民の無許可操業防止のための水域内での監視についての密接な協力関係の樹立

以上のような事項についての協力に関しては、事前の合意によって変更可能とされている。また、そのような協力は、両国が双方の管轄権内の水域で規則を制定し、取締りを行う主権的権利に影響を与えないとされている。(5条)

このように、この協定では、水域を管理するための共同委員会等の設立はなく、また、水域内においても各沿岸国の主権的権利の行使が完全に認められている点で、水域内での一般的な協力関係を約した以上のものではない。第三国民の無許可操業防止についても共同の取締り等の規定はない。

(イ) フランス・イタリア ボニファシオ海峡海域境界画定協定(9)

この協定では、フランス領コルシカ島とイタリア領サルディーニャ島の間の海域境界を画定した上で、両国の漁民が歴史的に共通に出漁していた水域を漁業のために共同使用することを規定している。

 

 

 

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