中間水域は東経124度45分から127度30分の間の水域とされているが、この水域には、日韓間の南部暫定水域と重複する水域がある。(6)中間水域は、協定には規定されていないものである。協定についての国会答弁では、中間水域における保存・管理措置についても、暫定措置水域と同様に、日中漁業共同委員会での協議を通じて、両国が自国漁船について必要な措置をとるとされており(7)、実質的に、暫定措置水域と同様の取締り体制になるものと思われる。
暫定措置水域と中間水域を設定したことによって、日中間においても日韓の暫定水域と同様に、緩衝水域として、両国が自国民および漁船に対してのみ管轄権を及ぼすことのできる水域が設定され、明確な境界画定を行うことを回避している。
このように、日本と韓国、中国は、いずれも漁業に関して、それぞれの排他的経済水域の間に暫定水域、暫定措置水域あるいは中間水域などの、相手方漁船に対して権限を行使しない水域を設けることによって、水域の境界画定を回避して、当面の、漁業に関する資源管理の方策を講じるている。これらの方法はそれぞれが2国間の漁業協定というかたちをとっているために、それぞれの相手方に対して、自国排他的経済水域内では完全な排他的管轄権を行使することができる一方、暫定水域、あるいは暫定措置水域、中間水域では旗国主義による取締りを行うことによって相手方の漁船に対する執行措置を差し控えるという消極的な管轄権行使態様をとるため、関係している2国同士の間では管轄権の配分は明白である。しかし、3つの協定がいずれも境界画定を行わずに、このような中間的な水域を設定して、第三国船が暫定水域で操業することを前提とした規定を欠いているため、第三国船に対する管轄権の配分に関しては、日韓協定の場合で見たように、権限分配関係が曖昧になっている。
4. 諸外国における漁業に関する水域共同利用の例
排他的経済水域の境界画定に関連して、従来からの漁業関係の調整のため、あるいは、何らかの理由で明確な海域境界画定ができない場合に、一定の水域を共同で利用する例はこれまでにもいくつかあった。