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すなわち、両締約国間においては、暫定水域において、他方当事国の国民、漁船に対して執行を行うことは認められておらず、暫定水域における執行は旗国のみが行うということになる。

このように、新日韓漁業協定では、両国の排他的経済水域を、それぞれの管轄権を排他的に認めて沿岸国が主権的権利を持つ排他的経済水域の制度をとる水域と、漁業共同委員会で決定された勧告を両締約国が国内法化して、自国船、自国民に適用し、執行措置も完全に旗国主義によらしめている暫定水域の2つの異なる性質を持つ水域が規定されている。

 

(3) 漁業共同委員会

漁業共同委員会は、第12条4項の規定により、操業の具体的条件に関する事項、操業の秩序の維持に関する事項、海洋生物資源の実態に関する事項、漁業の分野における協力に関する事項、その他この協定の実施に関する事項、に関して協議し、その結果を両締約国に勧告するものとされている。この規定にもとづく委員会の勧告は、第3条2項の規定により、自国の排他的経済水域における操業条件の決定に反映されることになる。ただし、同4項では、両締約国は委員会の勧告を尊重する、と規定されているのみであり、委員会の勧告の両締約国に対する拘束力は強制的なものとはいえない。

暫定水域における資源の保存・管理に関する措置に関する委員会の権限については、北部暫定水域と南部暫定水域とで異なる規定のしかたがなされている。北部暫定水域においては、第12条4項(5)の規定により、同水域の海洋生物資源の保存および管理に関して、排他的経済水域におけるのと同様に、両締約国に対して勧告を行うものとされている。他方、同条5項には別に、南部暫定水域についての規定があり、そこでは海洋生物資源の保存および管理に関する事項に関して委員会が協議し、決定するものとされている。両者の規定の違いによって、2つの暫定水域における委員会の権能の違いにどれほどの相違が生じるかは協定中のその他の規定からは明らかでない。また、協定では、委員会がこのような事項について協議し、勧告・決定を行う際の基準等についても明確にはされていない。

 

 

 

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