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また、他方締約国の漁船およびその乗組員を拿捕しまたは抑留した場合には、とられた措置およびその後科された罰について他方締約国に迅速に通報することが求められており(2項)、また、拿捕または抑留された漁船およびその乗組員は、適切な担保金またはその提供を保証する書面を提供した後に速やかに釈放されること(3項)が規定されているなど、国連海洋法条約が漁業に関して沿岸国がとる執行措置について課している条件をそのまま規定している。さらに、第5条2項は、自国の漁船が他方締約国の排他的経済水域で漁獲を行う際には、他方締約国の定める操業条件およびこの協定の規定を守らせるために必要な措置をとることを規定しているが、その際に相手国側の排他的経済水域での自国の国民および漁船に対する臨検、停船その他の取締りを含まないとしており、それぞれの排他的経済水域内では沿岸国のみが執行管轄権を持つことが明確にされている。

このように、それぞれの排他的経済水域とみなされる水域においては、執行権についても沿岸国に排他的に留保されており、国連海洋法条約の規定に沿った、典型的な排他的経済水域における沿岸国の管轄権行使の制度となっている。

 

(2) 暫定水域

新日韓漁業協定は、第9条で北部および南部の二つの暫定水域を設定しており、第8条では、暫定水域内で、第2条から6条までの規定を適用しないものとして、沿岸国管轄による排他的経済水域の制度の適用から除外している。

附属書Iの第2項(1)の規定によって、暫定水域内では、各締約国は他方締約国の国民および漁船に対して漁業に関する自国の関係法令を適用しないものとされ、同項(2)では、協定第12条の規定に基づいて設置される漁業共同委員会の勧告を尊重して暫定水域での適切な管理に必要な措置を、自国の国民および漁船に対してとるものとして、他方締約国に対しては立法管轄権の行使をひかえる規定となっている。

暫定水域における執行については、同項(5)で、方締約国が、他方締約国の国民または漁船が他方締約国が暫定水域において実施する保存管理措置に違反していることを発見した場合には、その事実および関連状況を他方の締約国に通報することができる、と規定しているが、通報を受けた締約国は、通報と関連する事実を確認して必要な措置をとった後、その結果を相手国に通報するもの、とされているのみである。

 

 

 

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