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原告は、これに対し、保証金の支払は第292条による申立に先行すべき条件ではないと主張した」(62項)が、裁判所は、先のサイガ号事件判決を引用し、「保証金の支払又は他の保証の提供が第292条による申立の先行条件でない」(63項)ことを再び明らかにした(50))。この点はもはや、判例として確立したといってよいであろう。そして、原告が主張する保証金額の2000万フランは「合理的」ではないとの主張に検討を進め、次のように判示した。すなわち、「裁判所は、保証金又は他の金銭上の保証の合理性の評価にはいくつかの要因が関連すると考える。そこには、嫌疑のある犯罪の重大性、抑留国の法律上科され得る刑罰、抑留された船舶及び押収された積荷の価値、抑留国が課した保証金の額及び形式が含まれる」(67項)とし、「本件において、裁判所は、嫌疑のある犯罪の重大性、フランス法上罪に科される最高刑に注目した。フランスの代理人は、カモコ号船長に科されうる最高刑は500万フランの罰金であると述べた」(68項)。また、「カモコ号の価値に関し、裁判所規則第112条2項(b)は、船舶又はその乗組員の抑留からの申立は、適当な場合には、船舶の価値の決定に関連するデータを含むと定める。しかし、船舶の価値だけが保証金又は他の金銭上の保証の額の決定を支配する要因ではない。本件において、当事者はカモコ号の価値について一致していない。口頭手続中に、原告によりカモコ号の代替価格は371万7521フランであるとの専門家の証言が提出されたが、被告はこれを争わなかった。他方、…裁判所は、38万フラン相当のカモコ号船舶の漁獲物が、フランス当局により没収され売却されたことに留意する」(69項)とし、裁判所は、被告の2000万フランの評価を実証する証拠がないとして、結論として当該金額は「合理的ではない」(70項)と判示した(51))。

その後、裁判所は、提供されるべき保証金又は他の金銭上の保証額、性質及び形式の作業に入り、「以上の考慮により、保証金又は金銭上の保証は800万フランとすべきであり、当事者が別段の合意をしない限り、銀行保証の形式とすべきである」(74項)と判示した。そして、原告が求めたITLOSの管理下に置かれるべきだとの主張については、「かかる手続は当事者の合意を有するのであり、合意がない限り、規則第113条3項に従い抑留国に提供される」(75項)とした(52)

 

 

 

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