なお、第24条1項は、但し書として、「事件が政令で定める外国人が行う漁業、水産動植物の採捕又は探査に係るものであるときは、この限りでない」と規定するが、本条文の趣旨は、「ある外国がその周辺水域において拿捕された我が国漁船について担保金等の提供による早期釈放の措置を講じない場合には、我が国としても、相互主義の見地から、その国の国民を政令で指定することにより、その国の漁船に対して担保金等の提供による早期釈放の措置を講じないこととすることができるように法律上このような規定を置いた(27)」とされる。なお、現在までのところ、このための政令の規定は定められていない。
また、釈放については、本法第25条で、「担保金又はその提供を保証する書面が政令で定めるところにより主務大臣に対して提供されたときは、主務大臣は、遅滞なく、その旨を取調官又は検察官に通知するものとする」(1項)と規定され、その通知を受けた取調官又は検察官は、所要の刑事手続上の措置をとり、違反者が釈放され、押収物が返還されるようにしなければならないとする。なお、こうした釈放の措置がとられるために満たすべき具体的な要件については、同法律施行令第8条1項が規定する。さらに、違反者が通常の刑事手続に従って負うべき責任を果たさないことが明らかとなった場合の制裁として、本法第26条2項は、大略、「担保金は、事件に関する手続において、違反者が求められた期日及び場所に出頭しない場合に、当該期日の翌日から起算して1〔カ〕月を経過した日に国庫に帰属することとされている」と規定する。もちろん、同条4項にあるように、違反者が求められた期日及び場所に出頭する等により事件に関する手続が円滑に進行し、終結した場合等には、もはや担保金を保管しておく意味がなくなるので、これを返還することとなる。
こうした国内法上の措置の担保金の金額の妥当性を始め、即時釈放が実現されなかった場合の独自の救済措置として、海洋法条約上認められている即時釈放に関して、ITLOSの2つの判決で、どのような判断が裁判所により下されたのかを次に検討してみたい。