日本財団 図書館


この告知は、告知を受ける者に対し、担保金省令第2条に定める事項を記載した書面を交付することにより行うとされる。当該担保金は、拿捕された者の釈放と船舶その他の押収物の返還の見返りとして提供される金員である。その結果、この担保金の性格は、その後の取調べ、起訴、公判という一連の刑事手続の進行を担保するものとして、主務大臣が保管し、違反者が取調べ等のために求められた出頭に応じなかった場合又は証拠物の提出に応じなかった場合には、国庫に帰属せしめ刑事手続の進行を妨げたことに対する制裁とする法制がとられている。もっとも、現実には、違反者は、担保金の提供により釈放された後は、求めに応じて出頭することはまず想定されないので、違反者にとっては、担保金は事実上罰金と同様の効果をもつことになる(23)。しかし、このことからただちにわが国のボンドの性格を処罰(罰金)の確保と捉え得ないことは、前述した通りである(24)。いずれにしろ、「ボンド制に係る行政措置である右の告知は、…刑事手続の進行プロセスに組み込まれた法的措置、すなわち、ボンド制は理論上、刑事手続の一部(25)」と解されることになる。

そうすると、橋本教授の指摘にあるように、ボンド制度が「現場でのペナルティ」として運用されている実態からすれば、担保金の額の決定につき、もう少し明確な基準設定が必要かもしれない(26)。ちなみに、本法第24条2項は、「担保金の額は、事件の種別及び態様その他の情状に応じて、政令で定めるところにより、主務大臣の定める基準に従って、取調官が決定するものとする」とし、同法律施行令第7条は、当該基準は、「違反の類型、その罪につき定められた刑、違反の程度、違反の回数等を考慮して定められなければならない」と規定するにとどまる。

なお、この措置の対象となる罪は、大きく分けて2つあり、第1に、本法の規定に違反した罪(第18条ないし第22条に規定する無許可操業、許可の制限又は条件違反等の罪)、第2に、いわゆる「排他的経済水域法」第3条1項の規定により外国人に対して適用される漁業法第141条及び第145条(同法第74条に係る部分に限る。)の罪、すなわち、漁業法第74条3項の規定に基づく取調官による立入検査及び質問の拒否、忌避等の罪である。本法第24条1項及び同法律施行令第6条にあるように、この告知に始まる諸手続を行う取調官は、司法警察職員としての資格を有する漁業監督官、海上保安官及び警察官とされている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION