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*16 ただし、保障措置規定群の中でも、228条は「領海を越える」外国船舶による海洋汚染に限定しているので、同条の規定する手続きの開始および実施における旗国の優先性については、領海内の外国船舶による海洋汚染には、適用はない。

*17 内水から出て領海を通航する船舶については、27条2項により別の規定があるが、具体的な場合を想定した詳細な議論は、奥脇前掲、注13参照

*18 こうした観点からして、公海上では、航行のみならず漁業その他の自由が認められているので「航行」や「漁業活動」の定義が、それほど重大な争点にはならない。これに比較して、排他的経済水域については、「航行」や「漁業活動」の定義および区別が、深刻な論争の的になる。Handbook, Vol. 2, pp. 845-846, 892-893. 1995年公海漁業に関する国連海洋法条約実施協定では、執行措置に関する独自の国際協力体制を規定していることと関連して、21条11項は、漁業資源保存措置に対する「重大な違反(aserious violation)」を規定している。そこでは、正当な許可の欠如、漁獲や漁獲区域の正確な記録がとられていないこと、船舶のマーキングや登録証の隠蔽、調査に関する証拠の隠蔽などが、重大な違反とされている。「重大な」違反とはいえ、かなり広範な行為態様が含まれている。「漁業資源保存措置の重大な違反」が、広範な行為態様を含んでいることによって、公海上での執行措置の対象が広がり、結果として、公海上の漁船の「航行の自由」が制限される傾向にあると解することができる。また、独自の監視・検査制度を設立している、南極海洋生物資源保存条約体制において、1995年に、漁業(fishing)の定義に関する合意が成立した。そこでは、漁業の定義を狭く限定するよりも、漁業が行われたとか、行なわれようとしていると判断するために、指針となる要因が列挙されている。この点について、Rosemary Rayfuse, "The Enforcement of High Seas Fisheries Agreements: Observation and Inspection under the Convention on the Conservation of Antarctic Marine Living Resources," The International Journal of Marine and Coastal Law, Vol. 13, No. 4 (1998), pp. 595-596.

 

 

 

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