本稿では、国連海洋法条約の基本的原理をさぐり、その一貫性の欠如という疑問を提起したが、これは、国連海洋法条約の基本原理の見直しにむけての、わずかな前提作業である。
〔注〕
*1 Rene-Jean Dupuy & Daniel Vignes., eds., A Handbook of the New law of the Sea, 1991, Dordrecht/Boston/Lancaster, Vol. 2, pp. 836-7, 841, hereinafter, cited as Handbook.
*2 27条は「船舶内犯罪」を適用対象とするが、その場合に、船舶が無害通航権を行使しているのか、それとも、有害通航になるのか、そして、有害通航に対して沿岸国が取ることのできる措置に関する規定(たとえば、25条にその可能性がある)と27条との関係はいかに解されるかなどについては、後に検討する。
*3 たとえば、船舶の運航に関わる者の逮捕などによって、船舶の運航に支障をきたすとか、関連条約が定めている乗組員の配乗基準を満たすことができなくなることによって、そうした事態が生じうる。
*4 なお、225条は、執行権限の行使にあたり、船舶の航行に対して危険を与えてはならないという趣旨の規定をおいている。また、公海上の臨検や拿捕に充分な根拠が存在しない場合や、正当ではない追跡権の行使、海洋汚染(を生じていると疑われる)船舶に対する執行が違法である場合については、それぞれ執行国の責任規定がある。
*5 Satya N. Nandan & Shabtai Rosenne eds., United Nations Convention on the Law of the Sea, A Commentary, 1989, Dordrecht/Boston/London, Vol V, 292. 4, hereinafter cited as Commentary.
*6 たとえば、1974年核実験事件で原告(オーストリアおよびニュージーランド)は、自国に固有の権利侵害としても、同時に、国際社会(の構成国のすべて)が享受する権利の侵害としても、公海の自由(航行の自由)の侵害を申し立てた。Pleadings CR 74/8, p. 2; Pleadings CR 74/10 pp. 18, 36.