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ここでも、220条2項が、27条の特別法であると解するか、それとも、22条2項の「第2部第3節の規定の適用を妨げない」という制限を、27条についても適用すれば、27条が220条2項よりも優先されるという解釈も可能である。いずれにしても、220条2項で航行利益を保護しているという国連海洋法条約の趣旨は明らかではある。しかし、「領海における外国船舶」について、一貫しない規定ぶりであり、国連海洋法条約の航行利益保護に関する基本原理について、疑問が生ずることは上記と同様である。

第三に、220条3、5、6項は、違反場所が排他的経済水域であり、通航場所が領海もしくは排他的経済水域である場合に関する規定である。第2部第3節の無害通航権に関する規定群が、領海における有害行為を対象とする規定であることからすれば、これらの規定群と、220条3、5、6項とでは、規定対象の区別が当初から存在していると、一応は解することができる。また、排他的経済水域で違反行為を行った船舶は、220条2項の規定群によって航行利益が慎重に保護されるのに対して、領海内で外国船舶が違反行為を行った場合には、220条2項の適用によるにせよ、25条や27条の適用によるにせよ、航行利益の保護の程度は減少させられているのであり、この点は、排他的経済水域と領海とでは、沿岸国のもつ権利が異なることからして、正当化できると解される。

 

(4) 排他的経済水域沿岸国の沿岸国の権利と外国船舶の航行利益

排他的経済水域上で、自国法令に違反した外国船舶に対して沿岸国が措置を取る場合について規定があるのは、漁業と海洋環境の保護についてである。漁業については、56条が沿岸国の主権的権利、62条4項が法令制定権を規定しており、73条が沿岸国法令の遵守を確保するために沿岸国が必要な措置を取ること(1項)、拿捕された船舶の早期釈放(2項)、法令違反に対する罰の実体的制限(3項)、旗国通報(4項)を規定している。海洋環境の保護については、沿岸国は56条により管轄権を付与されており、船舶起因の汚染について、211条5項が沿岸国の立法管轄権を規定しており、すでにみたように、220条2項3、5、6項が、排他的経済水域での違反行為に対する排他的経済水域もしくは領海における執行措置を規定している。

 

 

 

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