ついでに、当国における水路業務分野関連の制度、技術水準について簡単に紹介すると、水路測量が実施されていないため、関連の法律、規則、組織などの制度はありませんが、水路業務の一部とも考えられる験潮所設置と験潮観測業務をモーリシャス気象台がモーリシャス島、ロドリゲス島で実施しています。そのデータは国際協力のためハワイ大学に送られています。また漁業省水産研究所では保有小型船を用いて水質、水温観測等を水産資源の観点から実施しています。また首都ポートルイス港における港湾管理、航路安全確保業務はモーリシャス港湾公社が行っており、港湾内の安全水深維持や水深確認のため、南アなどの外国業者に航路の維持浚渫、水深確認を外注し、水深データ図を作成させています。しかしモーリシャス海図が無いため、ポートルイス港へのアプローチや出入港には英国水路部製の古い海図が使われており、モーリシャスはその海図改補に役立てるため上述のデータを英国水路部に送って、新たに改補されたものが主に入港に利用されているようです。
モーリシャスには大学があり、そこの工学部測量学講座で測量技術者を育成しています。が、水路学、海洋学講座などは無く、必要な人材は国が外国の大学に留学させて確保し、指導的立場にあたらせるか外人コンサルタントを雇用するという政策を採っています。技術レベルは中進国並?高等専門教育機関が少なく発展はこれからのようです。最高教育機関であるモーリシャス大学で測量学コースを履修し一定の経験を積んだ卒業生は国家測量士?の称号を有し未熟練技術者を指導します。陸地の測量ではかなり進んだ測量技術、例えばGPS、光波測距機等を用いて測量していますが、まだ大勢は習得、慣熟の途上と言えます。したがって高度な知識をもつ専門家が少なく、先進諸外国からの新技術移転に期待するとともに今後の一般技術者のレベルアップが課題でしょう。
3. 専門家の活動現場
住宅土地省内の専門家受け入れ責任者はMr.S.Ho Man Cheong、測量部長(Survey Division、Chief Surveyor)です。測量部における測量実施計画等の最終決済権者。カウンターパートとしてMr.R.Khoobarry、副測量部長が私への質問、助言、事務手続き等を支援してくれています。JICA専門家は両国政府間取り決めによりいくつかの特権を付与されていて、これにより一部特権があります。