当庁は、その機会のある度に、外務省とJICAの組織する国際緊急援助隊に積極的に参加していくという意思決定を積み重ねてきました。この1年間では、トルコや台湾の地震に際して我が国が派遣した国際緊急援助隊に特殊救難隊隊員や船艇の職員を参加させました。陸上の被災地での救援活動ではありましたが、日頃から鍛錬してきた救難技術を生かして、崩壊した建物の下に埋もれている被災者の救出作業を警察や消防の職員と共同で成功裡に行い、立派にその使命を果してきました。近年では国際緊急援助隊の活動そのものも成長し、経験の蓄積によってより効果的に行えるようになり、トルコの例のように瓦礫のなかから被災者を生還させるまでになってきています。また、後者のようなケースでは、外務大臣からの依頼に応じ、邦人の退避活動の最後の手段としての輸送力のある大型巡視船を現地沖に派遣することによって、在留邦人の大きな心の支えになってきました。昨年8月の邦人退避活動としての東チモールへの巡視船「みずほ」の派遣は、98年のインドネシア危機(当時、私は、内閣安全保障室にいて邦人保護を担当しており、当時の村岡官房長官に危機管理監とともに、事態への対処をご説明した際に、巡視船の派遣についての指示を直々に受けました。)以来ですが、東アジア及び東南アジアでの事件発生の際には、官邸の関与のもとに今後も同業務の依頼が外務大臣より運輸大臣に対しなされる可能性は高く、今後とも当庁の活動の場が生じることもあろうかと思います。今後ともあらゆる場面に応じた研究を進める必要があると思われます。
海賊への対処
アロンドラ・レインボウ号(A号)に代表される東南アジアでのシージャック事件の頻発は、同海域での近年の治安の悪化を反映しています。それと同時に、現地の海上警察勢力の空白を利用して、大規模かつ多国にわたって活動を展開する多国籍の国際犯罪組織が成長したことをも物語っています。当庁は、A号事件の発生に際して、行方不明船の捜索という観点から当庁巡視船及び航空機をA号の航行予定水域に派遣しました。また、この時点から、このような事態に対処すべく関係諸国の海上保安機関と連携する方策を探ってきました。それは、昨年11月にたまたま小渕総理のASEAN会議でのイニシアティブと幸運にも一致する形で海賊関係国際会議の開催という新たな目標が設定されることによって加速されました。