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詩舞(群舞)

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◎詩文解釈

作者の盧綸(ろりん)(七四八〜八〇〇)は杜甫(とほ)などよりもやや後の中唐の詩人で、出身ま都(長安)に近い河中府。少年期には安禄山の乱を避け、また青年期にはチベット軍の長安侵入などで都をはなれていたがその後長安に出て官史を志願したが試験には合格しなかった。

この作品はその当時のもので、荒れはてた唐の都、長安の春景色を眺めながら自分の不運を嘆いた様子などが詠まれている。

詩の内容は『雨を運んだ春風が樹木の茂った山を渡って吹いてくる。振り向けば長安の城壁にある沢山の門(宮城・皇城の周囲に集中した十六ケ所を含めて、長安城全体で二十七ケ所の門があったので千門と称している。長安城内図参照)の辺りに、雑草がやたらと生い茂っている。なつかしい故郷の家は夢に見るだけで、何時になったら帰ることが出来るだろうか。また川の水面がぬるんで春がめぐって来たが、戦乱で都をのがれた人達はどれだけ帰って来たのだろう。川岸の草原は、浮き雲の空までも果てしなく続いているように見え、一方、長安城内の高低様々な宮殿が夕日に映えて見える。自分は儒者を志したが、この様な乱れた世に出会って、髪に臼髪が増えるほど苦労しながら長安で暮らそうとは思ってもみなかった』というもの。

 

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長安城復元図(一部)

 

◎構成振付のポイント

詩文構成は、第一、二、五、六句が風景描写で、先ず一句目は雨と風と遠い山。二句目まそれより近い城門と荒れた草むら。五句目は遠くまで続く川原の展望、六句目ま二句目と同じ辺りに残された宮殿の夕景である。残りの第三、四、七、八は心象的な内容で、三句目は自分の望郷の思い、四句目は戦乱に出会った人達の望郷への推測。七、八句目ま現状をやや虚無的(ニヒル)に表わしている。

この作品は杜甫の傑作「春望」とよく似ているので参考になるが、作者の盧綸(ろりん)は杜甫ほど詠歎調ではない。

さて舞踊構成の上では、風景の部分が構成しやすく、振付も扇を活用した自然の描写や、また中国の絵画を参考にして建築物の形を取入れるとよい。五句目は遠近法的な配列、六句目はそれに高低をつければよい。それ以外の心象表現は、本来は一人称的なものだが、五人一組の群舞ルールに従って、抽象的な円陣を作り、ゆるやかな回転動作で夢をイメージさせる。次の四句目では集合離散の体形動作を振付するのも一法である。更に七、八句目は異和感覚または二律背反的な抽象振りを考えて前との振りの連続性を活かすとよい。白髪だから老人にすると云った考えはなじまない。

 

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長安城内図

 

◎衣装・持ち道具

戦乱の影響はあるにしても、衣装の色は春らしいグリーン、ライトブルー系の明るいものを選び、袴も同系色でまとめる。扇も淡い色目で図柄は霞模様などのソフトなものがよい。

 

 

 

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