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規定の細部を解説した中では、「発声の技術について」の項で「審査のポイント…1]発声の自然さ、2]声量の豊かさ、3]声の明瞭さ、4]節回しのよさ」をあげさらに難点の例として「1]発声…かすれ、割れ、ひっくりかえり…2]声量…声量が乏しい、声量がない、(以下略)」など細かく例を示しています。

次に「音程」と「詩心」についての審査ポイントと審査区分が記され、そのあとに「態度」についてのポイントとその区分があります。その内容としては「舞台マナー…歩き方、マイクの使い方。吟詠マナー…吟詠中の見にくい癖、目をとじる、頭のグラツキ。社会人としてのエチケット…衣服のつけ方、頭髪、化粧などに注意」としています。

前の五項目は、当然ながら重要な順番に並んでいて、点数もその順で高く評価されるようになっていますから、音楽性に優れた人の得点はそれなりに高くなる、ですから結果としては、間違った評価にはなっていないと思います。

 

見た目、と音楽性

でも現実に私はコンクールのレベルが落ちていると感じる、それはなぜでしょうか。それは得点の比重の上では音楽性が重要視されているのですが、評価の過程ではそれ以外のことに気を取られ過ぎているからではないかと思うのです。

出場者の吟詠が音楽として、音程が確かかどうか、しっかりとした共鳴を伴った声量豊かな声かどうか、詩の情感を的確に表現できていたか、などが十分に検討された上で、舞台マナーや社会人としてのエチケットなどが付随的に評価されるのが順当です。

しかし、実際には本線である音楽性の前に、姿勢とか格好、衣服のつけ方、など見た目の評価が先に立ってしまうことが多くありはしないでしょうか。

音楽性の評価を公平にやるのは大変難しい面があることは確かです。審査基準にある「声量の豊かさ」ひとつを取ってみても、マイクを通した吟者の声が、本当に声量のあるものかどうか判断するのは易しいことではありません。マイクの使い方が上手であれば声量の弱さはカバーできます。それで高い得点が取れれば、吟者自身も“声量がある”と思いこんでしまうでしょう。

これがもし、吟界の一般通念となったら、音楽的レベルは下がらない訳にいきませんよね。

審査規定の運用のし方と、吟者の音楽的向上、これは鶏と卵の関係で、どちらが先とはいえませんが、重要な関連性を持っています。いずれにしても吟詠の音楽的向上を目指す皆さんとしては、まず「しっかりとした音が出せるかどうか」といった基本から考えなおす必要があると思います。

審査に関する細かい疑問点については、次回以降で触れたいと考えています。

 

 

 

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