日本財団 図書館


吟詠のさらなる発展のための提言

舩川利夫先生に聞く

吟詠上達のアドバイス―第48回

 

吟詠界の一つの項点にコンクール優勝または入賞があります。私はそのレベルが最近少し落ちてきたように思えるのです。なぜでしょうか。

 

 

007-1.jpg

舩川利夫先生のプロフィール

昭和6年生まれ。鳥取県出身。米子工業専門学校卒。箏曲家古川太郎並びに山田耕作門下の作曲家乗松明広両氏に師事、尺八演奏家を経て作曲活動に従事。現代邦楽作曲家連盟会員。若くして全目本音楽コンクール作曲部門一位、NHK作曲部門賞、文部大臣作曲部門賞などを受賞されるとともに平成4年度(第8回)吟剣詩舞大賞の部門賞(吟剣詩舞文化賞)を受賞されている。数多い日本の作曲家の中でも邦楽、洋楽双方に造詣の深い異色の作曲家として知られる。おもな作品に咄雲路」「複協奏曲」その他がある。また、当財団主催の各種大会の企画番組や吟詠テレビ番組の編曲を担当されるとともに、夏季吟道大学や少壮吟士研修会などの講師としてご協力いただいている。

 

吟詠は一に音楽、二にマナー

 

芸の道を志す人は、少しでも上達しようとけい古に励みます。そしてできればコンクールに出場していい成績を取りたいと思う。それを一生の目標としている人も大勢いるわけです。ですから優勝者というのは大変な栄誉を担うことです。

ところが近頃の優勝者、入賞者を見ていると、どうもレベルが以前にくらべて低くなってきているように思うのです。吟詠は音楽芸術ですから、まず音楽生に優れていなくてはいけないのに、それ以外のことにとらわれて、本質を見失っているように思うのです。

つまり、コンクール審査のあり方というか、規定の運用とか重点の置き方が一つの問題。もう一方では皆さんの練習の仕方にも問題がありそうですね。

 

吟詠コンクール審査規定とは

コンクールの審査をする基準となるのは財団が定めた「コンクール審査規定」ですから、その内容を見ながら、現状と重ね合わせて考えてみましょう。

「審査の基本方針」を見ますと、「…つまり、吟詠は心と態度、日本語の教養、邦楽の素養などの総合芸術である。だが、この総合芸術を分析していくと、おのずから、これを構成している重要な要素がある」として、それは「1]正しい発声、2]正確な音程、3]正確な発音、4]的確な詩心表現、5]礼節をわきまえた態度、の五項目に大別される。この五項目を審査すれば、おのずから全体を審査できる。…」となっています。

これでわかるように、まず大事なのは吟詠の音楽性ですよ、と言っているのです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION