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漢詩初学者講座 伊藤竹外

吟詠家に漢詩のすすめ―(三十四)

 

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伊藤竹外先生プロフィール

愛媛漢詩連盟会長、(16吟社、会員200名、毎月指導、添削)、六六庵吟詠会総本部会長(吟歴60年)、財団公認愛媛県吟剣詩舞道総連盟理事長、財団法人日本吟剣詩舞振興会理事

平成5年 文部大臣地域文化功労賞

平成8年 財団吟剣詩舞大賞功労賞

著書 豫州漢詩集(編著)、南海風雅集(編著)(2版)、漢詩入門の手引き(10版)他。

 

一、吟界の将来は何に託するか

新世紀を迎えた吟界の将来は必ずしも洋々たるものでまありません。テレビ文化の影響、趣味の多様化、青少年の育成難、老齢化などの難問題を如何に克服し、前途を切り拓いてゆくかが我々に与えられた命題であります。

吟界は優れた先達によって各流、各派が輩出して共に提携し、各県に連盟が生まれ更には(財)日本吟剣詩舞振興会の推輓によって素晴しい飛躍、発展を遂げて参りました。

然し時代の変遷はめまぐるしく昔の三百年は今の三十年に匹敵し、意識の転換を図らねば過去に押し流され埋没してしまいます。

これまでの吟詠界の発展は大会に集約されましょうが、その内容は一、コンクール、二、優秀吟士の発表、三、構成吟舞の演出などです。その多くは同じ吟題の繰り返しですから飽きられるのも当然です。古い伝統を守ることも大切ですが、芸術は又、大衆は常こ新しいものを求めています。先ずその素材である詩歌に現代作詩家よりの提供が必要であると思います。

三年前、香川における国民文化祭の漢詩大会に続けて今年度は群馬、明年は鳥取こおいて開催が決まっています。正に劃期的な事であります。今こそ全国の漢詩人も結集して吟詠界と提携し新世紀への道を拓きたいものであります。

 

二、南海道名勝、先哲篇の課題について

本年五月五日、愛媛県松山市において「全国名流吟剣詩舞道大会」が開催されますが、その素材として四国南海道の名勝、先哲篇を募集しましたが、遠隔地の未知の方にとっては難題だったようです。然し必ずしもその場所に吟行し見聞しなければ作れないものではありません。名勝は全国どこでも似たようなもので、パンフレットによってもその特徴と背景を挙げていますから、それを詩語に選んで起承転結にまとめたら優劣は別として詩になるものです。どこかへ吟行したらすぐ作詩する習慣を積み重ねて勉強の素材とすることをおすすめします。

 

三、先哲篇の作り方

この題もこれまで何度か課題に出しております。その作り方の要領として昨年二月号及び七月号に解説しています。その中で特に次の項目が目立ちました。

(一) 理念ばかりで作らず具象性を盛りこむこと。

(二) 過褒の言葉を述べ立てないこと。

(三) 結句を安易な語で逃げないこと。

もう一度再読して玩味して下さい。

 

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