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これまで順調に来ていますが、何か悩んだことは?

紗織 「正直に言って、辞めようかと思ったこともあります。それは中学校の時ですが、これという原因もないまま、自分の中で何か苦痛に思えたからです」

誰かに相談したの?

紗織 「祖母に辞めたいといいましたが、ここまでやってきたのだから、最後までやりなさいといわれました。祖母は怖いですから、言うことを聞きました」(大笑)

 

指導するにあたり、感じることはありますか?

英容「お稽古に関しては怠けることもありませんので、その点で困ったことはありません。ただ、以前のようにがむしゃらにやればいいという年齢でもなくなってきたので、そこを変えていかなければと思っています。また、他にも多くの会員がいますが、その子たちと比べるとかなり個性的といいますか(笑)、飛びぬけているところと苦手なところがあり、本人もわかっていると思います」

個性的とはどういう意味ですか?

英容 「気迫のことです。他の人が真似ようと思っても、その気迫は真似できないでしょうね」

容楓 「やれないことでも、やりぬくという強さ、それが気迫になって表れるのではないでしょうか」

紗織 「以前、踊っていて扇子を落としたことがありましたが、気がついたら自然に次の振りに移っていて、なんとか踊り終えることができましたが、自分自身は強さというより失敗のことを考えない性格だからできたのではないかと思います。舞台から降りたあとは、大泣きしましたけど」(笑)

剣舞で優勝した感想は?

紗織 「剣舞はまだまだと思っていますので、驚いているのが正直な感想です」

コンクールに出るにあたり、注意した点は?

英容 「青年の部の剣舞は男性も一緒ですし、彼女は体格的に大きなほうでもありませんから、外見的な強さでは不利になり、結構身体も硬いほうですから(笑)、条件はよくありませんでした。しかし、その中で上位を狙うには表現力でカバーするしかなく、とくに目による表情、目付けに気をつけました。剣舞における強さと大きさが、内面から表現として出て、それが評価されての優勝なので、私としても大変嬉しいです」

課題となる点はありませんでしたか?

英容 「そうですね。お扇子の回転に難点があったかなと思いますが、それでも怯まないので(笑)すごいなと思いました。まあ、それが課題といえば課題でしょうか」

扇子は苦手なの?

紗織 「得意ではありません。手先が器用ではないので、苦手ですね」(笑)

容楓 「細かいことが好きではないのでしょう」(大笑)

課題曲は英容先生が選ばれたのですか?

英容 「はい、課題曲の中では彼女に合うものを選んだつもりですし、彼女もまたやりたいといったので『馬上偶成』を選びました」

紗織 「自分の詩心を表現しやすいと思いましたし、男性の剣舞と対抗するには強さだけではなく、詩心表現ができる題材のほうが向いていると思いました」

剣舞と詩舞ではどちらが向いていると思う?

紗織 「えっ…、詩舞らしい詩舞は向いていないと思います。優しい踊りは苦手ですね、目がきついものですから(笑)。力が入ると怖い表情になってしまうので」(笑)

紗織さんにとって剣詩舞とは何ですか?

紗織 「小さな頃からずっとやってきて、私にはこれしかないと思っています。また、私が教えてもらったことを小さな子に教え、会員の中から優秀な子が出てくれば嬉しいです」

最後に、紗織さんに対してアドバイスなどがありましたらお願いします。

容楓「本人の力もありますが、お祖母様やご家族の力でここまでこられたと思いますから、これからは本当の芸をコンクールだけではなく違った立場から頑張ってほしいです。人に勝つということから脱皮して、しっかりと芸を磨いてください」

英容 「今もっているものは人並み外れたものがあると思いますが、また違った一面を見せてほしいというのがひとつ。その他、大学を卒業してからどうするのか、いろいろな転機があると思いますが、剣詩舞をしなくてはという思いが重荷にならないように自分をコントロールしながら、これからも続けてほしいと思います」

ハナエ 「本人の意思もありますが、私としては続けてほしいですね」

本日はお忙しい中、ありがとうございます。皆様の益々のご活躍を期待しております。

 

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武道館大会のリハーサル後に楽屋で。写真左より杉浦容楓宗範、妹の長坂理絵さん、長坂紗織さん、祖母の長坂ハナエさん、師の杉浦英容さん

 

 

 

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