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少壮チャリテイー寄付等で

タイ王室に謁見の栄

代表で招かれた河里臈泉さんの手記

 

少壮吟士・河田臈泉さんはこのほどタイ国へ招かれ、同王室の謁見の栄に浴しました。少壮吟士チャリティーコンサートの益金等五百二十万円(内、臈泉さん主催「小さなコンサート」益金百三十五万円)がタイヘ寄付され、同国のエイズ関連、奨学金として生かされたことに、タイ王室が感謝の意を表したものです。

 

笹川良一創始会長の偉大さを実感した旅

私はこの度、笹川保健協力財団からの派遣としてタイ王国へ行かせていただき、シリントン皇女の拝謁を仰ぐという思ってもみない機会を与えていただき、大変ありがとうございました。

少壮チャリティーコンサートは平成五年度よりエイズ・チャリティー資金として約五百二十万円の寄付を行って参りました。その資金は笹川保健協力財団を通じてタイのラジプラチャサマサイ財団に寄付され、エイズにより親を失った子弟への奨学金を出す事業に運用されることになり、同財団の会長以下十九名の協力者に対して王室より感謝の意を表するため、特別拝謁を賜る旨のご下命がありました。私はその内の一人(日本からは一人)として参加させていただいたものです。

今回タイヘ参りましての一番の感想は、笹川良一創始会長のご人徳がいかに偉大であったか、その活動がいかに広範囲にまた長期にわたり、世界各国の現在と将来を思いやる懐深い慈愛に満ちていたか、ということです。まさしく「世界のササカワ」であり、その「ササカワ」からの派遣であるという理由で、少壮の末席におり全くその資格にふさわしくない私でさえ、現地の皆様のあふれんばかりの好意と感謝で迎えていただくことができました。

第一日目(九月十七日)は午前中、市内の有名な観光地であるエメラルド寺院と旧王宮をご案内いただきました。その夜急に皇太后(医療関係に特にご熱心に活躍された)生誕百年を祝う特別ディナーに招かれることになりました。その日ま国王陛下の御姉君が出席され、全国から厚生省・医療関係者および医療関係事業に多大の寄付を続けてきたタイ国内の富豪およそ二千人が出席していました。イブニングドレスを着るような格式の高いディナーだと急に聞かされた私は、予定外で大変困りましたが、着物をもって行っておりまして、それを着させていただき、日本人としての品位を保つことができました。タイの代表的名士がお集まりになっている中、今回中心的にお世話いただいたドクター・テイラー(元厚生省ハンセン氏病局長)にお引き回しいただきましたが、皆さまから、日本の着物は気品があって美しいと、口々に驚きとお褒めの言葉をいただきました。

 

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タイ厚生省の医師で、通訳をつとめたプラサード博士(右)と筆者

 

この席にいらしたラジプラチャサマサイ財団会長スマリー女史にご挨拶する機会がありました。女史が一番ご熱心に言われたのは笹川鎮江先生のことで、「お体の調子がお悪いと伺っていますが、どうぞくれぐれもお大事になさってくださいとお伝えください」と、特にお言葉をおあずかりしてまいりました。

二日目(十八日)は笹川記念研究施設(笹力創始会長が七十五歳の記念にプレゼントされた)を見学させていただきました。ここではたっぷりと時間をかけ、また説明してくださる研究者の皆様が「ササカワ」の援助をいかにありがたく頼もしく思っているかを判ってほしいという思いがひしひしと伝わってまいりました。またその恵まれた研究施設の中で、世界最先端のエイズワクチン研究に没頭できる喜びと使命感が伝わって参り、ひときわの感動を覚えました。

三日目(十九日)がいよいよ謁見の日でした。王室の謁見は人数制限が大変厳しい上に、この日はほとんどが厚生省医療関係者で、一組二十人の計十組が拝謁の栄に預かりました。私どものグループだけは一段高い所に並んで最初に拝謁を受け、一人一人の名前が紹介されるという、他のグループとは違った扱いでした。

タイは王室を重んじるお国柄で、毎日「今日の皇室」という番組がテレビ放映されます。その夜八時にはNHKの国際放送を含め全局が一斉に私どもの模様を報道しました。不肖私は着物姿で中央にいたためか終始映っていたそうです。(私自身は別の予定のため、残念ながら見ることができませんでした)

タイでは六千バーツ(約二万円)あれば児童一人が一年間食べて、生活して、教育を受けることができるのです。これをもとに計算すると、私どもが寄付した五百二十万円は、児童百人分、三年弱の生活費、教育費として役立つことができます。これが今回、エイズのために親を亡くしたり教育を受けられなくなった子供たちに対する奨学金制度というかたちに結実したわけです。

吟詠が自分の楽しみというだけでなく、こんなはっきりした形で役に立てるとは、これほど嬉しいことはありません。医療分野と芸術分野、仕事の内容は違うけれども、それぞれの分野で熱い思いでまじめにがんばっておられる姿を発見し、私も私の分野で精一杯やらせていただこうと決意を新たにしました。今回のタイ行きは本当に有意義でした。こころから御礼申し上げます。

 

 

 

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