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返し(二回目)の和歌前半では、扇で見立てた兜(かぶと)をかぶる振から始まむちり、馬に乗って鞭(むち)(扇の見立)を打って敵陣に向う。最後の和歌後半にかけては、抜刀して切り込みの型を激しく見せ、手負になるがなお防戦して功を挙げ、勝ちどきのポーズに桜が散ってくる雰囲気を作る(武士が倒れて終ってもよい)。

なおそれとは別な発想だが、演者が女性の場合は、登場人物を女武者(例えば巴御前の様な)として持道具を長刀(なぎなた)に替えて舞踊構成するのも面白い。

 

◎衣装・持ち道具

黒紋付に似合った袴の組合せがよい。扇は黒骨の金無地が無難であろう。前項で述べた女武者の場合の袴、鉢巻は紫色が似合う、また扇は満開の桜を描いたものもよい。

 

詩舞

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◎詩文解釈

作者の広瀬旭荘(一八〇七〜一八六三)は江戸時代末期の漢詩人で、若年より兄、広瀬淡窓の指導を受けたが、十七歳で亀井昭陽の門に入り、その後樺島石梁や菅茶山にも学んだ。勤皇の志が厚く、佐久間象山・僧月照・吉田松陰・木戸孝允などとも親交を持ち、天保七年には堺で家塾を開き、また江戸にも滞在して詩名を高めた。

この詩が作られたのは、年代は不明だが、旭荘と縁が深い大阪の桜の宮に遊んだ折のもので、この神社の境内は古くから花見の名所として知られてきた。

さて詩の内容は『桜の花が咲くと、この神社には多くの人達が花見に集まってくるが、花が散ってしまえば誰も寄りつかなくなってしまう。ただそうした中で、一つがいの鴬だけは緑の葉桜になった木陰で、互に鳴き交わしているのである』と云うもの。

ところで、この詩の心は単なる情景描写ではなく、本音として云いたいことは『人は満開の桜のような富や権力には集まってくるが、一とたびその人が財産や地位を失うと、誰もが寄りつかなくなるのは情ないことだ。ごらんなさい鳥たちは表裏なく、葉桜になっても枝に止まって鳴いているではないか』と云うもの。

 

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花鳥図(広重画)

 

◎構成・振付のポイント

前項で述べた詩文解釈のいずれを選ぶかは自由だが、今回は日本人の美意識を代表する“花鳥風月”の中の花と鳥を振付のポイントにすることを提案したい。

まず前奏から起句にかけては桜が満開の境内をイメージして、花吹雪や大勢の見物客の動きを、或るときは二枚扇を使うなどして明るく表現する。承句は作者の心境で静寂な動き、見廻す境内の花は散り、一輪残った花に手を触れようとすれば、花びらはばらばらに分解して風に流されていく。転句は地面に落ちた花びらを孤独に眺めていると、鴬の鳴き声が聞こえてきたのでその方向に耳を向けようとすると、また別な方向からも鳴き声が聞こえて来て、演者は鳥の声に離されて次第に浮き立ってくる。結句は役変りして鳥の擬態振りを扇や袂(たもと)を活かして表現し、舞台一ぱいにのどかな雰囲気を見せるか、又は作者のままで鳥たちの様子を眺めながら、やがて絵筆(扇)で写生のポーズを見せて、後奏で退場する。

 

◎衣装・持ち道具

作者中心に衣装を選ぶと地味になってしまうが、テーマが花や鳥なので、やや派手目な淡い春の色を選ぶとよい。扇は振付によって決まるが、前半は桜、後半は鴬にふさわしい色を使い分けるか、または霞模様で前後を通して使える色目のものを選ぶ。

 

 

 

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