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平成十二年度夏季吟道大学

 

■平成十二年七月二十八日(金)〜七月三十日(日)

■全国モーターボート競走会連合会本栖研修所

 

真剣な議論、充実した講義。

すべては芸術性豊かな吟詠のために。

 

吟剣詩舞の芸術的向上を目指した夏季吟道大学が、本栖研修所で開かれました。

百二十名の受講者は、充実した内容の講義を一言一句聞き逃すまいと、真剣な眼差しで課業と取り組んでいました。

 

七月二十八日(金)

午前十一時三十分、モータボート訓練生が待ち受ける中、平成十二年度夏季吟道大学受講者を乗せたバス三台が全国モータボート競走会連合会本栖研修所に到着。訓練生に先導された一行は休むまもなく講堂へと入っていきました。

講堂に入ると早速、矢萩保三事務局長から吟道大学の目的が語られ、笹川鎮江会長は二十九日午後からご出席の旨が伝えられました。そして、昭和四十四年に始まった吟道大学はこれまでに四千五百名が受講。吟詠家対象だけでも三千三百九十名が研修を受けています。また、ここでは第一線で活躍する指導者が対象で、日ごろ宗家会長として吟詠を指導している方々も、一生徒として講義を受けることになり、引き締まった空気が室内に流れていました。説明の後、役員、関係者の紹介があり、午後からの開講式を迎えることとなりました。

昼食の後の開講式では国歌斉唱が行なわれ、入倉昭星常任理事が力強く開講の言葉を述べられました。さらに、河田神泉副会長が学長あいさつで登壇し、笹川鎮江会長の言葉を代読されました。その言葉の中で「吟詠は魂に栄養を与えるもの」という言葉が印象に残りました。

受講生誓いのことばでは一班班長の井上盛吟さんが立派に務めました。記念合吟では一班副班長の古城龍宝さんが先導を務め、朗々とした吟詠を聴かせてくれました。そして、研修所生活の規則が説明され、点呼の指導が終わると、昼食を摂り、いよいよ課業が始まりました。

午後の課業の始まりは河田神泉副会長の「吟剣詩舞の向上と指導者の役割」で、笹川良一創始会長がご苦労されて財団を創立した話や、最近の十七歳が起こす事件に触れながら吟剣詩舞の大切さなどを語られました。そして、指導者に対する提言として「吟剣詩舞を広めるためには指導者が問題意識をもち、自分を高めなくてはいけない。宗家だから会長だからというのではだめで、自分を磨く勉強をしなくてはならない。自己満足はいけない」と核心をついた話をされました。

二番目は高群華要常任理事の「財団の組織運営と吟剣詩舞道憲章の精神」が話され、昨今の状況から財源も厳しい状態にあるが、財団は組織的に優れており、その団結力で乗り越えて行こうと熱く語られました。また、リーダーに求められる要素として、優れた吟力、高い指導力、何事においても清潔であることを挙げられていました。

三番目は鈴木吟亮常任理事が登壇し「審査規定の解説とコンクール審査の実態」を話されました。審査の基本方針やコンクールに関する採点方法などが事細かに説明され、みなさん財団方式の審査方法を十分理解されたものと思います。

夕食後の課業は医学博士、日野原重明先生による「習慣として歌うこと、吟じることの健康上の効果」の講義が行なわれました。ユーモアを交えた話はみなさんの笑いを誘い、その笑いの中にも得ることの多い講義でした。とくに習慣的に吟じることは健康にもよく、生活習慣病の予防になると話されていました。

初日から素晴らしい講義がつづきましたが、みなさんも一言一句聞き逃すまいという姿勢が見え、吟道大学の名に恥じない充実振りでした。

 

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吟剣詩舞の向上と指導者の役割について話す河田神泉副会長

 

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受講生誓いのことばを述べた井上盛吟さん(一班班長)

「誓いの言葉という重要な役割をさせていただき、光栄に思います。ここで学んだことを持ち帰り、これからの吟道に役立てると共に、吟詠発展のために全力を尽くしたいと思います」

 

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記念合吟の先導をした古城龍宝さん(一班副班長)

「大変光栄で、身の引き締まる思いでした。大勢の受講者の中で役割を担当させていただき、また貴重な体験をさせていただいたことに心から感謝申し上げます」

 

七月二十九日(土)

二日目は朝六時起床、朝の点呼と笹川良一創始会長発案の「健康かけ足」並びに「とり舟体操」で幕を開けました。

午前の課業は「意見交換その一、吟詠の普及振興をめぐって」と題し、世話役の意見が発表されました。入倉昭星常任理事は剣詩舞家から見た吟詠論を展開し、「剣詩舞のできは吟詠にかかっている。吟舞一体と考え、詩心を十分に理解し吟じて欲しい。また、一般にも興味をもってもらうために、身近なテーマを詩にし、好きな節調、新しいリズムで吟じる、そんな遊び心を大切にした吟詠もよいのではないか」と述べられました。また、工藤龍堂常任理事は青少年の育成に触れ「日本人の血が騒ぐような吟詠をすることで、青少年にも興味を持ってもらえると思う」と心に触れる吟詠こそ大切だと話されました。

 

 

 

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