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吟詠のさらなる発展のための提言

舩川利夫先生に聞く

吟詠上達のアドバイス―第39回

 

吟詠に必要な“体”の続き。吟詠は身体の大部分を使う芸術なので、よい吟者は日頃から運動などして、体を柔軟で強くしておきたいものです。今回は実践その一「ストレッチング」

 

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舩川利夫先生のプロフィール

昭和6年生まれ。鳥取県出身。米子工業専門学校卒。箏曲家古川太郎並びに山田耕作門下の作曲家乗松明広両氏に師事、尺八演奏家を経て作曲活動に従事。現代邦楽作曲家連盟会員。若くして全日本音楽コンクール作曲部門一位、NHK作曲部門賞、文部大臣作曲部門賞などを受賞されるとともに平成4年度(第8回)吟剣詩舞大賞の部門賞(吟剣詩舞文化賞)を受賞されている。数多い日本の作曲家の中でも邦楽、洋楽双方に造詣の深い異色の作曲家として知られる。おもな作品に「出雲路」「複協奏曲」その他がある。また、当財団主催の各種夫会の企画番組や吟詠テレビ番組の編曲を担当されるとともに、夏季吟道大学や少壮吟士研修会などの講師としてこ協力いただいている。

 

ストレッチングでしなやかのびのび吟詠とからだ

「人体の器官は使えばその働きが向上し、使わなければ衰える」という法則(ルウの法則)があります。(ただ注意したいのは使いすぎ、例えば声帯は常識的に連続二時間くらいが限度でしょう)。加齢に伴って体力が低下するのも、適度に使うことで下降カーブを緩やかに押さえることができると言われています。

あなたが運動とあまり縁が無い生活をされていたら、年齢に関係なく、今日から、少しづつでも、できれば定期的に、身体を動かすことを始めてください。

「歌うことで体を鍛えている」という方、これは間違いではありません。姿勢、呼吸法、発声法が正しければの話です。この三要素を向上させる基本が「からだづくり」と言えます。少し横道にそれますが、「吟詠は腹の底から声を出すので、健康によい」と言われています。でもよく考えてみると、大変曖昧な言葉であることに気づくでしょう。「腹の底から」とはどんな声なのか。胸と腹にだけ共鳴させて歌う、一見力強い吟、―実は遠くまで響かない吟―に観念的に陥ってしまう恐れがあると思います。それが「健康によい」とは、吟じることで腹筋などをよく使うから、エネルギーを適当に消費して腹が減る、ということのようです。腹の底から出す声が必ずしもよい吟につながる訳でないことを理解してください。また、力み過ぎは内臓器官によい影響を与えません。

 

ウオームアップを兼ねて歌う前に

ストレッチ運動は身体のスジを伸ばしたり、関節の動く範囲を広げる運動です。血流をよくして軽いコリをほぐしたり、全身をリラックスさせ、しなやかな身体をつくる効果があります。

従って、吟詠教室などで最初に皆でストレッチを行えば、無駄な力が抜け、しかもからだが適度に活性化して、声が出やすい状態になり、一石二鳥です。

勿論、週一回程度の実践ではやや少ないので、個人が家で実行する習慣をつけて戴きたいと思います。

 

 

 

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