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吟詠のさらなる発展のための提言

舩川利夫先生に聞く

吟詠上達のアドバイス―第38回

 

武術や大相撲の社会でよく言われる“心・技・体の充実”は吟詠にもあてはまります。これからの数回は主として“体"について考えます。

 

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舩川利夫先生のプロフィール

昭和6年生まれ。鳥取県出身。米子工業専門学校卒。箏曲家古川太郎並びに山田耕作門下の作曲家乗松明広両氏に師事、尺八演奏家を経て作曲活動に従事。現代邦楽作曲家連盟会員。若くして全日本音楽コンクール作曲部門一位、NHK作曲部門賞、文部大臣作曲部門賞などを受賞されるとともに平成4年度(第8回)吟剣詩舞大賞の部門賞(吟剣詩舞文化賞)を受賞されている。数多い日本の作曲家の中でも邦楽、洋楽双方に造詣の深い異色の作曲家として知られる。おもな作品に「出雲路」「複協奏曲」その他がある。また、当財団主催の各種大会の企画番組や吟詠テレビ番組の編曲を担当されるとともに、夏季吟道大学や少壮吟士研修会などの講師としてご協力いただいている。

 

吟詠の心技体

 

吟詠を含め、芸術表現を考える上で、“心”とは芸術家の全人格であり、“技”とは自分の意思を的確に伝える技術、“体”はそれらをいつも最高の状態に保てる器(うつわ)と解釈していいでしょう。

 

吟詠は肉体芸術

歌の上手な人を「ノド自慢」というように、確かに歌はノドで歌うもの。しかし“迫力ある吟詠”を吟じようとすれば、ノド、鼻、口腔を始め頭、胸…と極端にいえば身体全部を動員させねばなりません。吟詠が肉体芸術と言われる所以です。姿勢、呼吸法、意識を集める場所、となると“技”の分野です。その前にまず始めるべきことは、技を発揮できる体をつくる、言いかえれば「歌に適した身体に作り変える」ことです。

皆さんは心身ともに健やかに生きようと常々心がけていると思います。そこをもう一歩踏み込んで、吟のための身体作りに積極的に取り組んで戴きたいのです、せっかく志した道のために。

どんな訳でどこを丈夫にしたいのかを、簡単にお話します。

自分が立つ姿勢を安定させる=しなやかにスックと立つことは、ゆるぎない吟の基本です。全身、特に下半身を強くしましょう。

正しい腹式呼吸を習慣化する=深く、長く保つことができる息は、詩情表現の幅を広げます。腹筋を中心に横隔膜を上下させる筋肉を鍛えましょう。

 

 

 

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