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第28回全国少壮吟詠家コンクール決選大会入賞者紹介

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競吟が開始されると、会場はそれまでとは違う静けさをみせ、重苦しい空気が流れました。一番手の中村末雄さんから最後の井戸清明さんまで、こうした状況で吟じることはさぞかし大変なことだろうと思われますし、やはりプレッシャーから絶句や誤読をする人もいました。会場で見ているより舞台の上は、想像以上の緊張感があるようです。しかし、プレッシャーや緊張感に勝たなければ少壮吟士を手にすることはできません。出場者の皆さんの必死な姿には感動すら覚えました。

すべての出場者の審査が終わると、審査講評が行われ、邦楽家の河野正明先生が壇上に立ちました。その講評をまとめると、

■音程が素晴らしく良いと評価された人は六名、次に良い人が一八名、その次が五十名いました。六名の人は大変優れているが、総合的に見ると入選するとは限らない。

■伴奏はカラオケで、変えようがない。だから、自分の吟を伴奏に合わせるようにしたい。たしかに流頭の節、問合い、長年の慣れなどがあり、変えようとしても簡単には変えられないが、伴奏はコンクールの規定であり、ぴったり伴奏に合う方が点数も良くなる。例えば、伴奏の出始めがファ(三半の音)であるのに、それにも関わらずミ(三の音)を伸ばしていると、聴いていて不安定に聞こえる。

■一つひとつの伴奏に対して、吟の寸法を合わせる訓練をする。

■今回の出場者の中で、最初から最後まで節も間合いもぴったり伴奏とあった方は二名いた。偶然ではなく相当訓練してきたのではないか。

という内容でした。さらに河田神泉副会長が総評を述べられ、河野正明先生同様に全国少壮吟詠家審査コンクールでは伴奏が重要であることを強調されました。そして、待望の入選者発表が行われました。

名前を呼ばれるたびに会場は一喜一憂する姿が見られ、入選者が壇上に上がると、会場からは大きな拍手が起こりました。今回、三回目を通過し、晴れて少壮吟士候補になられた方は、伊藤美智子さん(神奈川)、明神春恵さん(高知)、岸本伸子さん(大阪)の三名でした。表彰式では笹川鎮江会長がお元気な姿で登場し、入選者一人ひとりに表彰状を手渡していました。

夕刻六時、高群華要専務理事が閉会の辞を告げると、長時間にわたる決選大会も成功のうちに幕を降ろしました。しかし、吟詠家にとって吟界随一の難関を突破するために、この時から来年の挑戦が始まっているのでしょう。

 

 

 

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