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●教訓詩・従軍詩=「中庸」「偶成」などの教訓的な詩や、「城山」の様に戦(いくさ)を扱った詩を吟じる場合、男性は黒紋付か地味な色紋付。女性は色無地・小紋などのやや地味なもので地色は寒色系(青・紺・紫系)やグレー系がよいでしょう。

●情景詩・懐古詩=作品は数多くあるが、女性の場合、着物の種類(小紋とか、つけ下げとかの区別)については特にこだわらず、色調と図柄に注意を向けて下さい。色調は前項でも述べように、作品の季節感によるものと、内容的な色彩感覚即ち、情熱的であったり明朗なものは暖色系(赤・橙・黄系の色)、苦悩、悲しみ、幻想などは寒色系の色彩を優先させて下さい。図柄については詩心やイメージが合うものを選び、假にも「寒梅」の吟者は、菊やばらの図柄を使ってはいけません。

 

<舞台別の衣装選び>

出演する舞台の生格によって衣装を選ぶ場合もあります。

●招待吟=主催者が「米寿」「創流記念」などの会に出吟する場合、例え祝儀曲でなくても、礼装で出演するのが先方に対する礼儀です。

●リサイタル=吟者が一人で何曲も続ける舞台では、曲目中心に衣装を選ぶことは不可能です。こうした場合は、吟者が最も似合う色調で、具体的な図柄を避けたものを選びます。

●大合吟=多人数が統一された衣装で舞台に並んだ姿は壮観です。10名以上では、色無地の着物と、帯も調和のとれた“おそろい”にすれば舞台栄えがします。色目は緑・べージュ・水色・藤紫・グレー系が無難。なお図柄のあるおそろいは、具体的な絵よりも図案的なものがよいでしょう。

●連・合吟=数人の仲間で連吟する場合、衣装がばらばらでは見た目のハーモニーが狂ってしまいます。大合吟の様に全員同じ衣装による統一感もよいが、その変形として帯だけ色違いにして調和とアクセントをつけると面白いものになります。なお少々ぜい沢ですが、吟題に適した図柄に対して、それぞれの地色に変化をつけた“色変り”のおそろいは衣装効果が抜群です。

 

<身ごしらえ・身だしなみ>

舞台では、どんなに良い衣装でも「着付け」が悪ければ少しも見栄えがえしません。衿元(えりもと)や着丈(きたけ)に注意し、履き物との調和も考えましょう。衣装に次ぐ身ごしらえは「髪型」です。吟詠家の場合、男性ならパンチパーマや長髪は避けるべきでしょう。女性は和服に似合った髪型を日頃から手入れして置くことも必要です。最近は洋服での生活が多いからつい洋髪が中心になり、眉や眼に髪の毛がかぶさって、表情が見えない人も見うけます。それと何よりも、大切な舞台で、衣装と髪型がアンバランスなのは舞台人として失格です。なお髪飾(かみかざ)りもなるべく控目にして、むしろ乱れ毛のないような身だしなみを心掛けて下さい。男性も髪の手入れ、無精ひげなど特に注意してほしいところです。

 

<扇の扱い方>

日本の伝統芸能では、舞台で演奏する人の約東ごととして扇を持つ習慣があり、大変風格があります。使用する扇は白扇(地紙が白無地)で大きさは男性が9寸、女性は7寸位です。扱い方は男性の場合、右手のは小指の腹(はら)が要(かなめ)をおさえるように握り持ちして、下方45度位の角度に構えるのが基本型です。歩行中は手はあまり振らないこと(自信のない人は帯にさして置き、止ってから持てばよい)。またハンドマイクを持つ場合などは扇は帯にさして置きます。女性は坐って吟ずる以外は扇は帯にさして置き、手は、右手指先を左手で軽くにぎります。坐奏の場合は扇の先を左手のひらで受けます。扇を帯にさす位置は、男女とも左乳の真下で、帯から2〜3センチ位のぞかせる迄さし込んで下さい。

 

<準備・点検のコツ>

“上手な見せ方”の仕上げは身ごしらえや身だしなみの項で述べた事柄を再度チェックして下さい。その時間は少くとも出演30分前に控室で済ませます。更に5分前になったらもう一度身だしなみに関するポイントをチェックして、安心と自信を持って舞台に進んで下さい。

 

九、意見交換会【II】―吟詠の普及振興をめぐって―

河田神泉副会長・入倉昭星常任理事・高群華要常任理事・鈴木吟亮常任理事・工藤龍堂常任理事

 

(メモ)

 

 

 

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