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第9節 熊本県泉村

 

はじめに

 

ここで調査対象とする熊本県八代郡泉村は、全村、九州山地の奥深い山中にあると言っても過言ではないほどの山村である。村域は、県下で2番目の広さを誇るが、そのほとんどが高い峰々と急峻な谷、そしてその間の急傾斜地からなっている。その広大な東部は、平家落人伝説の「五家荘」として知られた地域で、西部にある村の中心地からそこに達するには、深い谷間を分け入り、あるいは、眼下に谷を望みながら山腹を蛇行し、かなりの時間と緊張を要する。八代平野に程近い西部もまた、険しさの点では劣るが、山中にある。

林業と傾斜地での茶栽培や畑作、道路工事などの土木工事で人々の生活が支えられていたこの村では、早くから人口の流出が進み、流出条件のある者はほとんど流出してしまった、と言ってもいい程の状態に達している。そうした中で、静かに進行しているのがUIターンの動きである。

村の行政は、農林業の新たな振興を模索し、UIターンを視野に入れた若者の定住促進を、重点課題として、その具体的な取り組みを行っている。そうした村として、以下に考察する泉村を位置づけることができよう。

 

1. 地域の概況

 

泉村は、熊本県の中央部よりやや南に位置し、九州山地の一角を占める、人口2,868(平成12年3月末現在住民基本台帳人口)、面積266.59km2、村域の94%が山林で占められた山村である。村域は、そのほぼ中央の分水嶺によって東西に二分される。東部は球磨川の上流をなす川辺川の流域で、その南北及び東は1,400〜1,700メートル級の峰々で画され、平家落人伝説の地「五家荘」地域である。西部は、西方の八代平野を経て八代海に注ぐ氷川の流域で、村の人口や経済活動の中心を担う地域である。集落や耕地は、谷底の狭い平地や、急峻な山々の比較的緩やかな斜面に拓けている。

西部のほぼ中心にある村役場から八代市まで車で約40分、熊本市までは約1時間の距離にある。交通手段はほとんど自動車に依存しており、村の西端を氷川に沿って走る国道443号線、東部を川辺川とその支流に沿って南北に縦断する国道445号線、および村の東西両地域を結ぶ主要地方道小川泉線が、道路交通の骨格をなしている。

泉村の主要産業は農林業である。林業は国内需要の落ち込みや単価の低迷など厳しい状況に直面して、従業員の減少や高齢化に見舞われている。平成3年に設立された第三セクターの木材加工会社「(株)氷川」による林業活性化の取り組みがなされている。耕地のほとんどは、標高100〜600メートルの傾斜地の段々畑からなり、主として茶、トマト・キュウリ・その他の高冷地野菜、菊・その他の花卉、花木の栽培がなされている。中でも、茶は、粗生産額で、野菜と花卉の合計を上回り、「いずみ茶」で知られる主力の農産物である。茶畑は、村の耕地総面積280ヘクタールのうちの3分の2に当たる190ヘクタールを占めている。

 

 

 

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