しかし、つい最近、飲料水に大腸菌が検出され、このことでは大いに困っている。この団地には村の水道が敷設されておらず、団地の居住者で管理する地下水を利用している。保健所の指導で殺菌の措置をとっているが、今後のことが不安である。
また、長女の高校進学を控えて、当地に転居する前から予想してはいたが、学力のレベルや通学時間などの点が心配となっている。
また、自分たちはこの村の豊かな自然に惹かれてここへ転入してきたのだが、最近その自然環境が急速に変わりつつあり、気がかりである。医療についてやや不安を感じている。村には子供の数が少なく、教育の点からも好ましくないので、行政には子供を増やすような施策をとってほしい。
7. むすび
久木野村では、UIターンが徐々に進行中である。それは、この村が、熊本市や熊本空港への近接性や熊本市周辺の都市化の進展により、居住地として評価され始めているからである。それに対して、村は、若年層の地元定着には積極的な姿勢を示し、場合によってはそれに結果的に貢献することとなる観光開発、企業誘致、村営住宅の建設管理、出産祝い金制度などを実施している。しかしそれらの施策は、主としてUターンによる定住を狙ったものではない。
他方、Iターンに対しては、Iターン者の増加により種々の問題が発生しかねないし、現に一部では発生している、との認識の下に、村は消極的というよりも警戒的な姿勢をとっている。今回の調査に当たって村役場の担当者が作成した文書の中の次の一文はこのことを物語っている。
「村では、民間業者が多くの土地を分譲販売している現状があり、今後も増える傾向にある。しかし、村としては、Iターンが急速に増えることにより、地元住民とIターン住民との関係、排水の問題、公役・地元消防団の運営をどうするのか対策を考えなければならない。どうにか現在は国立公園内であるため建築制限など環境庁による取り組みの他、県が策定している南阿蘇景観形成ガイドラインによる景観に配慮した建築基準を設けているため、本村の魅力の一つである景観が守られている。」
そして、「村としては、……村で分譲地販売をしているのでなく、アパートもなく対応が難しく、現在のところは民間業者に任せている」(同文書)、ということである。また、すでに前述したように、今回のアンケート調査への回答で、UIターンに取り組みをしない理由の一つに、「行政として取り組まなくても、UIターン者の定住があるから」が挙げられている。また、UIターンに対する今後の方針としては、「取り組んでいくが、慎重に進めたい」と回答(選択)している。
恐らく、この村で今後懸念されるのは、「民間業者に任せている」宅地開発が、無秩序に行われ、UIターンで転入した人口の定着を見たものの、様々な問題が発生しかねないことである。環境庁や県による規制やガイドラインに加えて、村としても、民間開発業者による宅地開発に対して積極的に独自の施策をとる必要があるように思えるのである。
また、村では若者の定着を重要視する姿勢をとっているが、若年層の流出を止める施策と並んで、いったん村を離れた若者がUターンできるような仕組みや制度を、意図的、体系的に作り上げていく必要があると思われるのである。