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そして、この危険性を回避して「むらづくり」を推進するには、過去10年間の観光面での飛躍的発展を高く評価し、観光をテコとする農業振興を中心に据えることが強調され、7つの「むらづくりプロジェクト」が提起されている。久木野の良さに目覚め、村を誇りに思い、村を大切にする子供を育てる「久木野っ子育成」プロジェクト。3つの農業関連プロジェクト、すなわち、農作業を命ある食べ物を育て上げる芸術ととらえて久木野ブランドの確立や直販流通ネットワークの形成を狙う「芸術農場」プロジェクト、農業収入の上昇を図る「現代農業地力作り」プロジェクト、やる気と自信を持った農業後継者を確保するための「新百姓宣言」プロジェクト。そして、「水保全」、「村土保全」の2つの環境保全プロジェクト。村民の主体性を引き出し、身近な生活環境を整備する「身近なところからのむらづくり」プロジェクト。

また、平成12年9月に策定された『久木野村過疎地域自立促進計画書平成12年度〜16年度』では、村づくりの基本を、「第1次産業の振興を図ることを主眼におき、住民の経済、村民所得の向上、安定を図るためには、…今後も観光PR活動を行」い、(農産物の)「生産から加工、消費サービスまで村内で」やり、「都市との交流事業から過疎の村に活力を見出し、若者が定着する魅力ある村づくりを推進」することであるとしている。そして、「地域の自立促進の基本方針」を、「若年層の流出、農業及び地場産業の担い手の不足、高齢化の進行」という状況の中で、「若者の就業の確保とあわせて若者のニーズに合った都市の生活と変わらない魅力的な生活環境の整備等、定住しやすい環境の整備が重要であることを認識し、今後村に若者が住みやすいような環境づくりを重点事項として、各施策を推進していく」、としていることが注目される。また、豊かな環境を乱開発から守ることの重要性が強調されている。

このように、久木野村のUIターンにかかわる姿勢の特徴は、若年層のUターン・定着に力点が置かれていることである。これに対して、村や村民とは関係のない者の転入、つまりIターンは、必ずしも無条件に歓迎されているわけではない。とくに、豊かな自然環境を損なう危険性のある乱開発による「来住者の無秩序な増加」は、望まれていない。それは、「観光客の増加によるゴミの投げ捨てや分譲地開発・保養地としての個人別荘建設が進み、雑排水等による水質の汚染が懸念されている」(『自立促進計画書』)状況が生まれており、「自然をより残し自然と共生できるような環境づくり」(『同書』)が急務となっているとの認識によるものである。すでに、新たに造成開発された住宅・別荘は百戸を越え、地下水の汚染が一部の新たに開発された小規模住宅団地で発生する、といった状況が出てきているのである。

 

 

 

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