陶芸研究所の学生の修業機関は大半が1年間だというが、その間の生活費は、それまでの貯金などを充てるか、家族からの仕送りによる者がほとんどだという。こうした実態からみると、この陶芸研究所に全国から希望者が集まる要因の一つとして、「ふるさと島根定住財団」が平成8年度から始めた「産業体験事業」も、かなり機能していると思われる。「U・Iターンのための島根の産業体験事業」と称されるこの事業は、UIターンのきっかけづくりのために、島根県内で様々な産業体験をおこなう場合に、滞在に要する経費の一部を助成するものである。短期滞在型(1週間〜3ヶ月未満)の場合は月3万円、長期滞在型(3ヶ月〜1年間)の場合は月5万円が支給されるが、この対象の産業体験メニューの中に、農業、林業、水産業とならんで工芸が入っている。横田町や学校(研究所)では、陶芸研究所への入学希望者に対して、この制度を積極的にPRしている。
奥出雲陶芸研究所の修了生は平成12年3月までで33名だが、そのうち12名が終了後も町内に定住している。
このように「奥出雲手づくり村」構想は、UIターン対策としても顕著な成果を上げているが、課題も残されている。町は、施設整備や財政的助成は、対策としてあまり優先的に取り組んではこなかった。もちろん、構想に賛同する町民有志により、共同アトリエや窯元が開設され、移住してきた工芸家や学生・研究生達にとって、制作・発表の場を保障するものとなっている。しかし、移住してきた工芸家や専門学校関係者の中には、原料や製品の搬出入や販売市場の点でのハンデは大きく、また体験・観光と結びつけた工芸活動の点でも、時期(季節)的制約や場所的制約が大きいという声がある。それらのハンデや制約は、工芸家が個人的に対応していたのでは打開が難しいので、横田町を「工芸村」として「まとまって売る」ための「仕掛けづくり」を行政として考えて欲しいという。例えば、町内の工芸家の作品を定期的・恒常的に展示・販売する施設の整備とか、点在する町内工芸家(施設)を有機的に組み込んだ体験コースの設定とか、長時間の工芸体験とセットにした滞在型観光施設の整備とか、工芸家の緩やかな組織化(法人化)への助成とかが、要望としては出されている。
また、後述するように、UIターン者のための住居保障の点でも、空き家確保の困難などの課題が出てきている。