日本財団 図書館


071-1.gif

〔写真2〕

刺繍展で公開披露する「木村千鶴」さん(京都からのIターン)

 

工芸家が横田町を移住対象地として選択するにあたっては、横田町の構想の背後にある工芸の歴史と伝統、人材と技術・材料などの存在が大きかったと思われる。と同時に、町が移住者に対しての住宅の斡旋を重視し、それに目的意識的に取り組んだことも大きい。町は、平成4年に自治会長を通じて町内の空き家を調査し、「ふるさと人材確保推進室」の仲介で、希望者に空き家を貸与することとしたが、それは工芸家にとっての「当面の」住居確保に役立ち、20戸ほどの空き家が工芸家の移住用住居となった。

さらに、町の誘致に応えて、平成8年度には奥出雲陶芸研究所が、平成9年度には島根デザイン専門学校が開設された。これらはいずれも、岡山市に本拠がある学校法人が設立したものであるが、当初は陶芸の学校をつくるための適地を探していたところ、町が「奥出雲手づくり村」構想の一つの柱と考えて積極的に誘致したため、陶芸研究所のほかに、陶芸科、ヴィジュアルデザイン科、クラフトデザイン科の3学科を持つ専門学校も開設することとなった。

専門学校は2年制で、1学年の定員は50名だが、現在の学生数は24名。出身地は島根県・鳥取県が多いが、半分以上は山陰以外から来ている。なお、町内に居住し成績優秀な学生には、横田町から15万円の奨学金が支給される(定員33名。返還の必要なし)。在学中も、町内の窯でアルバイトなどをする学生も多いが、卒業後も町内の窯元への就職・アルバイト、共同アトリエでの制作といった形で、横田町に定住した者が9名でている。

陶芸研究所の方は、20歳以上ならば特に資格は問われず、6ヶ月〜3年間、希望に応じて学ぶことができることとなっている(定員20名)。こちらは希望者が多く、特に関東中心に20〜30台の女性が多い。人気の秘密は、陶芸をやろうと思っても、現在は、陶芸家に弟子入りして修業するか、カルチャーセンターで学ぶかの両極端しかなく、陶芸教室のような時間的制約なく制作したい、また紬薬なども自分なりに使いこなしてみたい、やってみて可能性がでてくれば将来は陶芸家を目指したい、という希望にマッチしているからだという。また、都会での制作上の制約がない上に、自然の中で、自分がつくった野菜などを食べて生活することができるという面も、人気の裏にはあるようである。なお、学校側が過疎地域に陶芸関係の学校をつくろうとした理由の一つも、都会では、窯をつくったり、火を焚いたりすることや、広い敷地を確保する面での制約が大きいことにあった。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION