ここで言う「慎重」とは、一口で言うなら「ターン者ならだれでもいい、というわけではない」ということである。ターン希望者が定住者として、例えば、農業希望なら就農に適切な人かどうか、あるいはサラリーマン希望なら誘致企業の雇用に耐えうるかどうか、判定する必要がある。選別である。
役場とターン希望者が接触する課程で、ターン者の意図・目的、生活観、就労の適性などを的確に把握できれば、受け入れる側、入ってくる側の双方にとって有益である。ターン者が定住後に後悔することがないようにするためにも、この選別、判定は意味がある。一般に、UIターンはターン希望者の方的な売り手市場と考えられがちな傾向があるが、そうではないだろう。とりわけ、Iターンの場合は、受け入れる地域側と相互選別が現実的なあり方だと思われる。両者の関係は、いわば“お見合い”なのだ。
東和町の場合、「慎重」というUIターンへの基本的な取り組み姿勢は、そういう意味であると解釈していいと思う。、要するに「慎重」ではあるが、取り組み自体は「積極的」という印象を受けた。
(2) 刺激効果〜UIターン者受け入れの目的として、同町は特にターン者による地域への“刺激”効果を挙げている。地域にはない新しい価値観を持ったターン者が地域に刺激を与え、地域の活性化につながる効果を重くみているわけである。地域が自然環境や伝統文化の良さを改めて見詰め直す機会になったりする。これも、ターン者の人材選別とともに、地域づくりにおける“人”の大切さを重視する理念から出ているものと思われる。
(3) 行政の対応が決め手〜ターン定住者の面接調査の中で、「定住を決意する最後の決め手となったのは、実は役場の窓口の親切な対応でした」という述懐を聞いたのも印象的だった。地域の特性、収入、住宅のことなど、ターン希望者は定住するかどうか最後まで不安と迷いがあるだろう。そんな時、役場窓口の担当者の熱心さ、親切さ、温かさが決め手となったのは、うなずける話である。改めて、役所の窓口の接遇の重要さを思った。
窓口の接遇だけでなく、行政のターン支援策が手厚いものかどうかもカギとなる。特に、住宅支援、農業等の就労研修などは重要な決め手になる。情報の提供を含め、行政の対応いかんがターン実現を大きく左右する。
ターン定住後の収入については、ターン者は減収をある程度は覚悟しているようである。収入の確保が極めて重要な問題であることはもちろんだが、「当面は、ある程度の将来展望が持てれば…」という声が聞かれた。
今後のターン施策の課題の一つに「携帯電話の“圏外”エリアの解消」を挙げているのも印象的だった。「携帯が通じないようなところには住めない」という若い世代の志向に合わせたものだが、携帯電話の圧倒的な全国普及という流れは、過疎地域も例外ではないことを示すもので、興味深い。過疎地域の道路整備、自家用車の普及が全国的にめざましいが、これに携帯電話の普及が加わる時代になってきた。
<参考文献>
・東和町過疎地域自立促進計画(前期)
・東和町の新規就農PRパンフレット「農業をやってみませんか!」