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その中にはオーバーステイでありながら就労、結婚、出産をする人達もいる。中には経済的な問題から出産後子どもを捨てたり、犯罪に走ったりする人達も少なくない。香港が中国に返還された後も香港人との結婚を目的に中国大陸から香港に来る女性は多い。同じ中国人であっても、香港に入るためには政府の許可が必要である。しかし香港の人口増を制限することもあって許可書を手に入れるにはかなり時間がかかる。中には香港人と正式結婚しているにもかかわらず許可が出ないため10年近くも香港と中国で別居せざるをえないカップルも多くいる。そのうち夫が別の女性と内縁関係になったり。連絡がつかなくなったりするケースも多くなっている。また、妻が出産後、夫が行方不明となり母子が路頭に迷うケースもある。

香港や大陸の人と結婚した日本人女性達の中には、大家族主義の中で、自分の居場所が見つけられず苦悩する人や習慣の違いに悩む人々もいる。特に、中国人夫の妻として文化大革命に巻きこまれた日本人女性の一人は夫が亡くなった後、はじめて日本に帰国して日本の発展ぶりに驚いていたが、現在日本での生活適応のため中国と日本を行ったり来たりしている。日本に帰国したときは話し相手になって様々な情報を伝えている。また香港や中国で国際結婚をした日本人を異文化の融合の視点から調査・研究したC. Yamakawa氏は、異文化の中での結婚が継続できるかどうかは、○○人と△△人というようなものの見方、考え方をやめて、お互いの違いを当然あることとして認識し、それを受け入れていけるかどうかにかかるのではないかと話していた。

これらの問題に対してISS香港を中心とした関係諸機関が様々なプログラムに取り組んでいる。またそのための施設も充実している。救世軍が運営しているシェルターは九龍地区にあり部屋数は310、それぞれの部屋にはベッド、机、クロゼットが備えており、階によって男性、女性と分けられている。入居の条件は単身者であること(夫婦、家族一緒には入居できない)、収入制限があり、60歳以下であることである。各自にかかる費用は各自で負担することになっている。母子用のシェルターも同じ地区にあり、こちらの方は一つひとつのフロアーに居住しておりケアテーカーが世話をしている。ほとんどの施設では経費は寄付や助成金で賄われており、各プログラムのリーダーは資金集めも大事な役割の一つであるとのことであった。香港においても民間の機関が時代のニーズに沿ったプログラムをたて、資金を獲得し、実際に運営し、他機関と連携を取りながらよりよいカウンセリングを行うことを目指している。

 

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救世軍が運営しているシェルター

 

 

 

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