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◆無国籍児・外国籍児・未就籍児の実態調査◆

今年度ISSJは、三菱財団の援助を受けて日本国内在住の無国籍・外国籍・未就籍児童の実態を把握するため、児童相談所と民間の外国人支援団体の協力を得て、全国規模の調査を実施した。現在、集計、分析、まとめを行っているので、今後はその結果を踏まえてどのような援助ができるか検討を重ねる。詳しい内容は、別項目にて紹介してあるのでご参照ください。

 

事例5:子どもの強制送還ケース

 

ISSJに児童相談所から連絡が入った。児童相談所の措置児で5才になる児童がいる。実父は日本人だが、子どもの出生前から行方不明で、実母はフィリピン人、2年くらい前から音沙汰がない。子どもの小学校入学前に何とかしたいがどうしたらよいか、という相談であった。実母は子どもが生まれて間もなく養育困難ということで子どもを、乳児院に預けた。子どもが3歳になるまで、実母は年に数回プレゼントを持って乳児院を訪れていたが、2歳の誕生日のプレゼントを持ってきて以来、今日まで実母は訪れておらず、携帯電話もつながらなくなった。

ISSJは児童相談所の担当者と会い、子どもに関する書類のチェックを行った。実母が残した書類としては、日本の市町村からの出生届原本記載事項証明、母子手帳、実母の外国人登録証のコピーがあった。ISSJは外国人登録証のコピーに書かれていたフィリピン本国の住所に家族がいるかどうかの調査をフィリピンの社会福祉開発省(DSWD)に依頼すると同時に、児童相談所に入国管理局で実母の出国記録を調査してもらうように依頼してもらった。また、ISSJでは在日フィリピン人の間で読まれている新聞等に人捜しの広告を出した。その後、入国管理局の記録により、実母は2年前に日本を出国したことがわかった。

しばらくしてフィリピンのDSWDから調査の結果が届き、実母の外国人登録証のコピーに書かれていたフィリピン本国の住所に実母の両親や家族、また子どもの姉にあたる11歳の子どももそこに住んでいることがわかった。DSWDのソーシャルワーカーがインタビューしたところ、実母はフィリピンに帰ってきたが病気のため1年前に亡くなったとのこと。実母の両親が替わりに子どもの養育希望を持ち、経済的にも時間的にも可能であることがわかった。

そこで、ISSJは子どものフィリピン大使館への出生届をフィリピン本国へ送り、子どもの祖母にサインして返送してもらい、出生届の手続きを行った。また、入国管理局への強制送還の手続きの援助を行った。祖母の友人が日本におり、フィリピンへ帰国する際、子どもを連れて帰ることとなったので、その友人が子どもをフィリピンへ同伴する許可もフィリピン本国政府より取った。多くの手続きを経て、ようやく子どもはフィリピンへ帰国した。DSWDからの適応調査によると子どもは地元の学校に姉やいとこ達と元気に通っているとのことである。

 

 

 

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