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3. 子どもの送還・無国籍児の問題

 

◆国籍取得・確認援助◆

人の流れが国境を越えることが多くなった今日、日本にいる子どもの国籍も様々である。その中に、日本国籍以外の親から生まれ本国政府へ出生届がされておらず、国籍の取得がされていない子ども達も少なくない。そのような子ども達の親の多くはビザがないまま、日本に滞在しているいわゆるオーバーステイの人が多い。また、そのような親から生まれた子どももビザを取得できずにオーバーステイとなる。ISSJではそのような子ども達の援助にも力を入れている。このプログラムは東京メソニック協会の助成によって行っている。

具体的には、出生届の手続きの援助や本国へ帰る場合の援助をしている。ISSJが出生届を援助するケースは、子どもの面倒を見ている実親や親戚・友人が、子どもと一緒に本国へ帰りたいが、どうずればよいのかという相談から始まることが多い。状況をよく聞いてみると、子どもの出生届がまだされていないことが明らかになる。オーバーステイの親の中には、大使館や市町村の役所に出生届を行うことで、オーバーステイが発覚し捕まることを恐れて届け出しない人もいる。いずれにしろ、本国へ帰るためには、出生届を行い、国籍を明確にすることが最初に必要である。その子どもの実母が手続きを行える場合はよいが、実母が行方不明で実母と法的に結婚していない実父や友人、親戚等しかいない場合、手続きは簡単にいかない。ISSJが行う出生届の援助は、主にフィリピンとタイの国籍のケースが多いが、両国の在日大使館では原則として子どもの実母が出生届を行うこととしている。実母の住所がわからない場合、ISSJは実母を探し出す最大限の努力を行う。方法としては、現在の子どもの養育者の協力を得て、実母の友人や知人の聞き取り調査、日本国内の母国語の新聞・雑誌に尋ね人の広告掲載、実母の住所の追跡調査等を行う。根気と時間のいる作業であるが、ISSJは子どもの福祉を守るために必要な作業と考えている。

子どもが強制送還手続きを踏んで親権者以外の同伴者と本国へ帰国する場合、フィリピン政府からの許可が必要となる。まずは、フィリピン国内における子どもの受け入れ家族の調査がフィリピン社会福祉開発省(DSWD)のソーシャルワーカーによってされる。その家族が子どもの受け入れを承諾すると、初めてフィリピン政府から子どもを連れて帰ってよいという許可がおりる。時間がかかるが、子どもの福祉を保護するために行われる手続きである。また、子どもが強制送還された後も、ISSJはDSWDの協力を得て、子どもの適応調査を行い、子どもの福祉が本当に守られているかを確認するようにしている。

 

 

 

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