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事例3:連れ子を養子縁組するケース -Step Adoption-

 

日本人の夫とフィリピン人の妻のD夫妻は、フィリピン国籍である妻の連れ子のEちゃんを養子縁組する希望があり、家庭裁判所からISSJを紹介されて養子縁組の申請をするに至った。このケースは、ISSJの国際養子縁組の中ではStep Adoptionにあたる。フィリピン社会福祉開発省(Department of Social Welfare and Development: 以下DSWD)と業務協定を結んでいるISSJへの申請は、フィリピンおよび日本の両国で法的に認められる形で養子縁組を完了させたいというD夫妻の希望に添うものだった。

現在D夫妻は妻の連れ子のEちゃん、その下に夫婦の実子、そしで祖父母の6人家族で日本のある県に暮らしている。日本人の夫と祖母は、将来、フィリピン国籍の妻と子どもが養子縁組完了後に帰化をして、日本国籍になることを強く希望していた。その理由は、すでにD夫妻は結婚して5年近くもその土地に暮らしており、今後もずっと日本で暮らしてゆく上では、便宜上日本国籍のほうがよいし、世間体も考えて実の親子として暮らしたほうがよい、というものであった。

一方、妻は母国であるフィリピンの国籍を捨てて、日本人になることに対して戸惑いがあったし、子どもにもフィリピン人としての誇りを持ち続けて欲しいという希望があったが、そのことを夫や義母に伝えることが遠慮もあってなかなか言い出せなかった。

養子縁組をすすめる上で養子の持つ文化的背景を尊重することは重要である。養親が養子の持つ文化、母国を否定してしまうと養子は自分自身に対して良いイメージを持つことが出来ず自信を失ってしまう。養子自身が大きくなって自分で判断して帰化を望むならまだしも、養父と祖母に強要されて日本国籍を取ることは養子の健全な育成と福祉にかなうものではない。今まで家族で帰化について向き合って話し合ったことがなかったと言うD夫妻は、お互いの考えの相違と養子の心の問題に改めて気付き、慎重に話し合って焦らずに決めていきたいと話した。

このようにホームスタディ(家庭調査)というプロセスを通して、今まであやふやにしていた家族の問題を認識し、話し合うきっかけになることは非常に多い。養子縁組を行う上でホームスタディは欠かせない重要なプロセスであるということをソーシャルワーカー自身も改めて認識した。

 

 

 

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