日本財団 図書館


事例2:在日カナダ人夫婦とパキスタン国籍の姪の養子縁組 -Relative Adoption-

 

このケースは在日カナダ国籍のB夫妻が妻のパキスタン国籍である姪(Cちゃん)を養子縁組したケースで、ISSJの国際養子縁組の中ではRelative Adoptionにあたる。

B夫婦は1985年にパキスタンにおいて婚姻し実子がいたが、二人は子ども好きで常々養子が欲しいと話し合っていた。1995年、家族は日本に駐在となり来日した。夫人は元々東南アジアのある国の出身であったが、幼い時に家族が政治的な迫害に遭い、パキスタンに移住した。パキスタンで育った夫人は、人種、宗教、性別の上で様々な偏見や障害を乗り越えなくてはいけなかったという。そこで、パキスタンで生まれ育つ姪を一日も早く家族として迎え、自由で迫害を受ける心配のない生活を与えたいという希望を持った。1998年に夫人はパキスタンに渡り、実親に対して養子縁組を正式に申し出た。実父母とも快諾し、パキスタンにおいて縁組宣誓がなされ、同年Cちゃんは来日した。Cちゃん自身もB夫婦や従兄弟との生活を望み、来日後も生活に良く順応していた。さらにB夫婦は日本において法的に養子縁組することを考え、ISSJを通じ手続きを始めた。

このケースの場合、カナダ国籍を有する夫婦とパキスタン国籍の子どもの養子縁組を行うのだが、家族は日本国内に住所を有しているため、国際裁判管轄権は日本にあることになり、準拠法により養親の本国法であるカナダのA州の法律が適用され、保護要件については養子候補者のパキスタンの法律が適用される。パキスタン大使館に問合せたところ、パキスタンには国際養子縁組に関する法律はなく、実父母の承諾があれば養子縁組は終了するとのこと。夫婦はすでにパキスタンで法的に縁組宣誓を行っていたが、ISSJでもジュネーブのISS本部を通して、パキスタンの連絡員に実父母の家庭調査および養子縁組承諾書を依頼し、実父母の生活の様子や養子縁組を希望する理由など改めて確認をした。

また、ISSJでは申立てに必要な書類を全て翻訳し、家庭訪問および児童調査を6ヵ月のうち3回行い、報告書を作成した。2000年の春、ISSJの援助でB夫妻は家庭裁判所に養子縁組の申立てを行った。申立てを行ってから家庭裁判所調査官により面接や家庭訪問が行われたが、その際もISSJのソーシャルワーカーが通訳として援助をした。申立てを行って約3ヵ月後には養子縁組を認める審判が下り、晴れて夫婦は養子縁組届を役所に提出し受理された。現在B一家は西ヨーロッパ駐在となり、幸せに暮らしているとのことである。将来カナダに移住する際は、現地のISSがまた援助することも可能であり、その旨も家族には伝えてある。

これは日本において外国籍の夫婦が他国籍の親戚の子と養子縁組したケースで、国際社会福祉を専門としているISSJ特有のケースである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION