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事例1:海外在住の外国人夫婦との養子縁組 -Non-Relative Adoption-

 

日本に出稼ぎに来ているアジア系外国人女性AからISSJに連絡が入った。同国人の男性と同棲しているうちに妊娠したが、男性は酒癖が悪く、酒に酔うと暴力を振るうので2ヵ月前にその男性とは別れたとのこと。現在妊娠4ヵ月であり、自分一人で働きながら子どもを育てることはできない。相手の男性には妊娠のことを告げておらず、今後も言うつもりは一切ない。また、本国の父はすでに亡くなっており、病弱の母に子どもの世話を頼むこともできないので、子どもを養子に出したいと希望していた。

ISSJは実母の親戚に育児の援助協力を得たり、母子寮等の公的福祉援助を利用したりしての子育てなど、実母が子どもを自分で育てる方法を一緒に時間をかけて話し合い、本当に養子縁組が最適な選択かを考えていった。しかし、親戚には妊娠のことを言いたくないし、また母子寮や乳児院を利用したとしても本国に帰る時に子どもを連れて行くことはできないという実母の考えは変わらなかった。

ISSJでは子どもが生まれる前に、実母に養子縁組承諾書のサインをしてもらうことはない。出産までは病院や出産費用に関する相談にものって、いろいろな面で実母をサポートする。この実母も無事に出産をし、生後1週間で子どもは養子縁組までの一時的保護として児童相談所の措置児となり、乳児院に措置された。実母は子どもに会うために乳児院を何回が訪れているうちに、自分で育てたいという気持ちが出てきた。育てたいが、現実的には育てられないという気持ちの狭間で悩む実母のカウンセリングをISSJは何度も行い、実母が自分で決定するためのサポートを根気よく続けた。結局子どもが1歳半になった時、「自分で育てることはできない」という結論を実母は出し、養子縁組を希望した。そこで、ISSJは児童相談所と協力しながらこの子どもに最適な養親候補者を探したが、児童相談所に登録している養親候補者はみな「日本人の子ども」を希望しており、この子どもに適する親はいないということがわかった。話し合いの結果、ISSJに以前から申請していたアメリカ在住の家族が子どもにとって最適ということになり、その家族と連絡をとったところ、「ぜひ、養子に」という返事であった。その後は子どもの移民の手続きを行い、また同時に子どもには養親候補者から送られてきた写真や本を見せ、適応のための準備を進めた。3ヵ月後、養親が日本に子どもを迎えに来た。写真等で準備していたので、子どもはすぐに「ママ、パパ」と養親になついた。その後、アメリカから送られてきた適応報告書によると、養子は英語もすぐに話せるようになり、皆に可愛がられて幸せに暮らしているとのことである。

 

 

 

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