国際養子縁組に関わるワーカーは、「子どもの権利条約」に明示されている子どもの家族の中で成長する権利の実現のために定められた1993年の「ハーグ条約」や、1997年に国際社会福祉協議会が完成した「家族の中で成長する子どもの権利―国内養子縁組、国際養子縁組ならびに里親養育に関するガイドライン」の理念を常に念頭に入れて援助を行っていかなければならない。すなわち、子どもは第一次的には出身国の出身家庭の保護のもとに留まることができるように努力することである。
ISSJは、日本で実親に育てられるべき子どもが、安易に国際養子縁組をすることがないように、出来る限り実親が子どもを育てるための援助をする方針をとっている。実親の養育が不可能な場合には、まず日本国内で養親を求めるために児童相談所などの関係機関と連携をとる。その次に国際養子縁組を考えるが、養親家庭を選ぶ際は子どもの人種的、民族的背景、障害など、そのニーズや実親のバックグラウンドなども考慮に入れ、子どもにとって最善の利益となる家庭を選ぶことが原則である。養子縁組には専門ワーカーによる細心の配慮が必要であるが、2国間あるいは3国間での国際養子縁組では、さらにワーカーの専門性が必要とされるところである。
すべての国際養子縁組は、関係する国の養子縁組法または国際養子縁組法、あるいは家族法に則して行われなければならない。そのためにISSJでは常に各国の関係する法律を研究する必要がある。このような研究、実践の経験に裏付けされた援助方法や法的な資料は、家庭裁判所、児童相談所、民間機関などへも貢献しえるものと考えている。
また、日本においてはまだ国際養子縁組法も制定されておらず、1993年制定のハーグ条約「国際養子縁組に関する子の保護及び協力に関する条約」に関しても批准していないなかで、ISSJが子どもの最善の利益のために国際養子縁組を着実に実践し続けていることは意味深いものと思われる。来日する外国人の増加に伴う国際結婚の増加、日系外国籍の人々の増加、また日本に入国する外国人の子どもの増加によるさまざまな形態の国際養子縁組の増加が現実の問題になっている。また、今後は急速なインターネットを通しての情報によって子どもが移動する危険性も予測される昨今、早急なる日本の国際養子縁組法の制定およびハーグ条約の批准が望まれるところである。