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しかし、同じイメージでも他の部分では、一個のピクセルは唯一回の観測値しか代表できないかもしれない。つまり、コンポジット・イメージを大規模なプロセスに応用するにはそれ以前に、イメージ・コンポジットの統計学的な意味合いを十分に考察しておく必要があるという事である。

 

6) 一次生産性

世界全体の海の一次生産性についての今日の評価は過去何十年にもおよぶ船舶での観測結果に基づくものであるが、それら船舶での観測地点や観測時期はこれまで無計画に決められる例が多かった。従って、そのような観測によってもたらされたデータ・セットを基に地球の時間依存性変動を分析することはできない。実際、現在の年間生産性平均推定値には2倍以上もの振れがある。

伝統的な船舶主体の海洋学にみられるサンプリング上の問題、例えば観測地点を変えながら観測を繰り返す際の時間的間隔が(代表的な海の動的タイムスケールと比べて)余りにも長過ぎるという問題などは衛星観測によって解決できる。例えば、2分間の衛星シーンでは200万ピクセルで200万平方キロメートルの水域をカバーすることができるが、もしこれを時速20kmキロの船舶を使ってピクセル毎にサンプリングしていたのでは、11年以上の長期を要することになる。

従って、比較的広大な海域の一次生産性を推定するには衛星の海色イメージを利用する方法が極めて魅力的方法と考えられる。つまり、海表面付近のクロロフィルを衛星によって推定できれば、一次生産性の数学モデルに入力すべき植物プランクトン・バイオマスの当初推定値(炭素または窒素単位での値)が分かる。

ただ、この数学モデルには一次生産性に影響をおよぼすその他の変動要因、例えば海水の温度、太陽光の強度、栄養素の供給度等についても、測定値、あるいは推定値を与える必要があろう。いずれにせよ、数学モデルによって毎日の一次生産性が予測できればそれを基に当初のバイオマス推定時点から次の衛星イメージ入手時点までの間の植物プランクトン・バイオマスの(潜在的)累積増加量を計算することができよう。

現在進行中の研究によると、少なくとも幾つかの地域に対する数学モデルを使ったこれまでの予測結果は実地フイールド調査の調査結果とも良く符号している。ただし、衛星による測定結果と数学モデルだけで海の一次生産性を予測するというこの方式を海洋生物学者にも受け入れて貰うには解決すべき幾つかの問題が残っている。

 

 

 

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