ペルーの沖合いや北西アフリカ、さらにはアメリカ西海岸沖合いの湧昇流システムは世界の海洋のなかでも有数の生産性の高い水域にあって重要な漁場を支えている。
他方、熱帯地域と比べると温帯や極地方の海域では栄養密度は十分だが、冬期の太陽光強度が植物プランクトンの成長には足りない。従って植物プランクトンのブルーム現象も季節限定となる。春になり太陽光強度が増すと、植物プランクトンの生産性が高まり植物プランクトン・バイオマスの蓄積が急速に進む。この春季だけの植物プランクトン・ブルーム現象は北大西洋や、極地方、さらには世界中の温帯地域の沿岸水域まで広がっている。
これまで、CZCSイメージ(画像)は主として沿岸水域の植物プランクトン・ブルームの調査や、前線、渦巻き、沿岸流等々の海洋循環現象の発見確認に利用されてきた。衛星からのCZCSイメージを使うことで、他の手法では不可能な海の表層付近のクロロフィル濃度をリアルタイムでマッピングすることも可能となった。更に、連続したイメージデータを利用することで植物プランクトン・ブルームの開始時期やその期間を調べたり、種々の海況の移動や持続性を調査することも可能となった。
このような調査研究は海のダイナミックス(動的特性)に関する知見の向上に大きく貢献している。
今後の研究ではCZCSイメージを利用して海盆における植物プランクトンのダイナミックス(動的特性)を地球規模で調べることに重点が置かれる。数多くの衛星軌道からのデータを組み合わせることでコンポジット・イメージを生成し、最終的には総ての海盆と海洋のCZCSクロロフィル・マップを構築する。週単位、あるいは月単位のコンポジットを作成すれば季節的な植物プランクトン・ブルームについても情報が得られる。更に年単位のコンポジットを作成して年度間の変動度についても調べる。なお、本文書に転載したコンポジット・イメージ(複合イメージ)はごく最近に作成されたイメージの一部であり、これを見るだけでもこの技術の素晴らしさが分かる。
このような衛星イメージ、あるいは他の類似イメージを経験した海洋生物学者たちは、大規模な植物プランクトン・ダイナミックスの研究にカラーの海洋コンポジットイメージを利用する可能性に強い関心を示している。しかし、日常的にコンポジット・イメージの解析を行うには、その前に幾つかの基本的課題を解決しておく必要がある。例えば、一枚のコンポジット・イメージに含まれる個々のピクセル(画像要素)が代表する観測数は一定では無いという問題がある。
コンポジット・イメージのある部分では、そこのコンポジット間隔の時間帯は雲が全く無い状況にあったため一個のピクセルで数多くの観測平均値を代表させることが出来る。