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図1 太陽光散乱と植物プランクトン濃度の関係

このグラフは表層水からの太陽光散乱比率を、波長の関数としてhm単位で、以下の3水域について表している(肉太線がCZCSによる観測結果)。

(A) 晴れた外洋海域で植物プランクトンの密度が小さい水域

(B) 外洋海域で植物プランクトンの発生率が中程度の水域

(C) 堆積物や植物プランクトンで濁った沿岸水域。

 

植物プランクトンの色素は主として赤と青のスペクトル領域でエネルギーを吸収し、緑色を反射する。従って表層水からの散乱(太陽)スペクトルと表層水中の植物プランクトンの分布との間には相関関係がある。そこで、特定の波長で海洋放射輝度を衛星から測定すれば海表付近の植物プランクトン密度やその一次生産性を推定できる(図1参照)。

海洋での食物連鎖維持という役割り以外に、植物プランクトンは海洋化学面でも大きな影響力をもつ。光合成の過程で植物プランクトンは海水中の二酸化炭素を取り出し糖やその他の単純な有機分子を生産し、さらに副生成物として酸素を放出する。他方、植物プランクトンがタンパク質のような複合分子を合成するには無機物栄養素(例えば窒素、リンシリコンなど)や鉄分等の微量元素が必要となる。つまり、海中や陸上のすべての生物に欠かせない炭素や酸素をはじめとする多くの元素の地球規模の生物地球化学的循環と海洋生産性の間には密接な関係がある。

地球温暖化(いわゆる「温室効果」)が懸念される二酸化炭素の大気中濃度の上昇からみても炭素の循環が地球上の気候にとって如何に重要であるかが分かる。全地球規模での海の一次生産性の大きさや変動度についてはこれまで殆ど分かっていない。その理由の一つは海洋植物プランクトンの密度が空間的にも時間的にも大きく変動するためである。

 

 

 

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