・観測機器の搭載
洋上に浮かぶ取水装置の波高、潮流などの海象条件による挙動の把握(位置情報、潜行情報)は、より信頼性の高い装置を技術構築して行く上で重要な事柄である。また、気象条件(気温、風向・風速、光度、湿度など)、表層水の塩分、水温、栄養塩、クロロフィル濃度を付加した設置海域のデータは、次に述べる海域肥沃化の研究に欠くことのできない重要な要素である。海上ブイ上の取水管出口の深層水の水温、流量などの把握も不可欠である。
こうした観測機器を取水装置搭載する場合に問題となるのが電源の確保とメンテナンスである。また、搭載機器、電源の重量を補う浮力の確保と、それに並行して発生する取水システム全体の強度など考慮すべき内容は多い。
海ヤカラ1号は、小型の深層水取水装置であり経費負担も軽減化できる。深層水を活用して地域振興を計画している地方自治体、民間団体もあり、手頃な取水システムと言える。今後、技術的な信頼性を構築し小型の深層水取水装置として位置づけられよう。
2) 海域肥沃化研究
・クロロフィル等の海域肥沃化パラメータの観測態勢の整備
この項目は、前述の観測機器の搭載内容と一部が重複する。気象条件、及び表層水の塩分、水温、栄養塩、クロロフィル濃度、海上ブイ上の取水管出口の深層水の水温、流量などの把握のための器機整備と搭載の他に、設置海域を中心とする面的拡がりを確認する手段が必要で、小型観測船による多点観測、リモートセンシングとの同期などがある。
・新しい概念である異なった深度の海水(深層水等含む)調合の探査
深度の異なった海水(深層水等含む)を調合して、その海水に新しい機能を発生させる発想は、これまでの深層水研究分野では全く行われていない極めてユニークなものと考えられる。現在は、深度600mと1400mの深層水の組み合わせを行っているが、より調和のとれた深度を異にする海水の組み合わせが存在するかもしれない。
そのためにバンドーン採水器等による任意の深さの海水を入手できる体制を早めに整備する必要がある。
・栄養塩濃度にあまり左右されない植物プランクトン増殖メカニズムの解明研究植物プランクトンの増殖には栄養塩が不可欠であるとされて、その栄養塩の供給源として深層水が挙げられている。