Lw以外の成分は水中を通過しないので、いずれも水中の情報を全く含まず、可視域リモートセンシングの立場から言えば雑音に当たる。特に大気に由来するLM、LAは全観測輝度Tの80〜95%を占め、しかも気象条件により変化するので、精密なリモートセンシングを行うには、このような事情から、海色リモートセンシングのデータ処理は次の2段階から構成されることになる。
1) 大気効果の補正
全観測輝度LTから大気や海面の光学的効果を除去し、Lwを取り出す。
2) 目的量の推定
得られたLwから目的の量(例えばクロロフィル濃度)を推定する。なお、これは海色リモートセンシングに限ったことではないが、上述の処理後、得られた画像を地図座標に上に投影する、いわゆる幾何補正が必要である。
大気補正手法の詳細についてはFukushima et al.(1998)等を、またクロロフィル濃度推定手法についてはKishino et al.(1998)等を参照されたい。
3. 海色リモートセンシングに適した衛星センサ
海色観測用衛生センサの満たすべき条件として、次のようなものが挙げられる。
1) 輝度分解能が十分に高いこと
もともと海水の反射率は1〜数%程度であり、他の地表面に比べて著しく低い。そのような低反射率での微少な変化を捉えるのに十分な分解能が必要である。
2)可視光の短波長域を含む可視域全体にわたる観測帯域を持つこと
クロロフィル濃度の微少な変化を捉えるには、400〜500nmの海域の観測が必要である。
3) それぞれの観測波長帯の幅が十分に狭いこと
高精度の観測を行うには、大気の吸収帯等を避ける必要がある。また、植物プランクトン等に特有の吸収、蛍光バンドの観測を行うためにも10〜20nm幅程度の狭帯域観測が必要である。
4) 観測幅が十分に広いこと
陸域と異なり、海洋での諸現象の変動の周期は短い。従って同一地点の観測頻度を十分に高くとる必要がある。そのためには、空間解像度を犠牲にしても観測幅(刈幅)を大きくとる必要がある。
表2-28に海色観測に用いられる衛星センサを示した。CZCSは最初の海色専用センサであったが、これは実験機であり、高々衛星運用時間の1割程度しか稼動していなかった。