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この方法は、考古学の分野でよく使用される。表2-26に示すように、深度600mでは、1950年に比べると89.1%、深度1400mでは、77.7%と現代炭素%(14C)は少なくなっている。そこで、この減少量から計算によって求めたのが、深層水の見かけの年齢(apparent14Cage)である。どうして「見かけ」という形容詞を年齢の前につけるのかは、深層水は開放系(open system)であり、その長い旅の過程で混ざり合っている可能性がある。もし、その試料海水が、大気との接触を絶ってから、パイプの中を流れて沖縄付近までやってきたとすれば(閉鎖系、closed system)「見かけ」という形容詞は必要ない。しかし、ここでは「見かけの年齢」を使う。

海ヤカラ1号を使って、2000年9月4日に採取した深層水の年齢は、930年(深度600m)および2030年(深度1400m)と、放射性炭素の測定結果から推定される(表2-26)。600mと1400mの深度差800mで、年齢差が1100年である。また、表面海水の年齢は0年としている。したがって表層水-中層水-深層水の間の混合は、非常にゆっくりであることが定量的に明らかになった。600mおよび1400mの2データから結論することは難しいが、深度600mの海水は表層水と深層水(深度1400m)の拡散混合によって形成されたと考えられる。

日本財団の研究助成を受けた本プロジェクトにおけるもっとも重要な発見の1つは、深度1400mの海水の年齢として2030±30年を得たことである。この約2000年という年代値は、世界で一番古いとされる北太平洋(北緯30〜50度、深度2000〜3000メートル)の深層水の年齢2000年と、ほぼ同じ値である。したがって、海ヤカラ1号の設置海域のフィリピン海に、北太平洋と同様に、グリーンランド沖で表層から沈み込んで形成された深層水が、海洋大循環の流れ(図2-28、2-29)に乗って、フィリピン海南部から沖縄付近へ長い旅の末に、流れてきた可能性がある。そのことを確かめるためにすでに発表されたフィリピン海深層水の年代測定データについて検討する。

 

3.3 フィリピン海深層水の年代

蒲生教授(北海道大学)は、東京大学博士論文(1978年12月)の一部の研究として、フィリピン海深層水の放射性炭素をはじめて測定した。彼の測定以外に研究例は見つからなかった。20年以上前の海水中の放射性炭素の測定は非常にたいへんで難しかった。そこで、その当時の測定法について、ここに記したい。「大量採水器(250リットル)を用いて深層水を採取した。船上にて海水200リットルを酸性にして全炭酸を抽出し、4N水酸化ナトリウム水溶液に吸収させて持ちかえった。

 

 

 

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