ブイ本体の上下動にともなって取水管内海水に生じる上向き方向慣性による溢水現象については、すでにハワイ大学のLiu博士等(1995、1997)により数式モデル、水槽試験及び実海域実験に基づく人口揚水実験としての研究結果が発表されている。
彼らの研究に適用されたモデルは、ブイ本体、取水管及び取水管内部の水柱の下向き運動を制御する弁から構成されている。
実海域実験モデルは直径1m、高さ0.5mのシンタクチィック製ブイの底部に流量調整弁を取り付けて、直径10cm、長さ24mの塩ビ製の取水管を吊り下げたものである。
波高0.9m、周期4秒の波において約4l/secの自噴流量が得られたと報告されている。
この値は「海ヤカラ1号」の自噴流量に比較して相当大きな値となっている。
6. 今後の課題
深層水取水施設の建設並びに取水された深層水の利活用は、全国的な広がりをもって研究開発が進められている。
このような時期の中にあって、洋上設置型海洋深層水取水装置「海ヤカラ1号」の再設置に関する調査研究を行ったことは、沖縄本島南方20海里の深度1400m及び600mから深層水を取水するための海洋深層水取水装置改良・設置技術の実績を深め、2層から取水される深層水の特価性を高めるための研究に寄与することができた。
平成9年2月に初期の「海ヤカラ1号」が設置されて以来、原因の異なる損傷が相次いで発生したが、その都度原因調査と必要な対策を講じて実績を蓄積してきた。