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深層水取水装置にとっては、取水管システム設置後の成否が最大の課題である。本研究では、取水管とブイ本体との相対運動が著しいブイ出口付近の取水管の材質・構造を大幅に変更し取水管組み立て要領を改善している。また、取水管の投入・設置作業過程で発生する取水管損傷の可能性を低減できるように作業要領を改善している。

大型台風通過後の揚水流量確認結果からは取水管に異常はないものと推定されるが、対策の成否ついては取水管全長に亘る外観調査を実施し確認することがが望まれる。

取水管システム及び係留システム使用材料の経時変化については、ロープ類の残存強度の調査を行い実績評価・蓄積をして今後の技術開発に資することが望まれる。

「海ヤカラ1号」再設置後の深層水自噴流量の確保と流量確認は、今後の海域肥沃化の研究につなげるための要求性能の一つとなる。しかし「海ヤカラ1号」の自噴流量実測値(5.5時間平均約0.5l/分)は、現在までに研究発表されている自噴流量に関するモデル計算値及び実験値(4l/分)と比較して相当に低い値を示している。自噴流量が小さく波に同期していないことから、自噴機構の見直しや計算モデルに工夫が必要であること、及び自噴流量予測の難しさを示唆しているものと考えられる。「海ヤカラ1号」再設置後における今後の課題を解決するために、具体的には次のような取り組み方が考えられる。

1) ブイ本体出口付近の改良型取水管を回収して取水管メーカーにおいて外観、構造、水圧及び解体材料試験を行って対策の効果を評価する。

2) 改良型取水管から下方へ100mまで及び1400m付近の一般部取水管を回収し、取水管メーカーにおいて材料試験を行い塩ビ取水管物性の経年変化状態と適性を確認する。

3) 係留ロープの一部及び取水系ガイドロープを回収してテトロンSロープの経年変化状態を確認し、ロープの安全率について再評価する。

4) 取水管全量を回収して、取水管組み立て作業及び取水管投入・設置作業過程における不具合発生の有無を目視して対策の効果を評価する。

5) 自噴流量改善対策として、ブイ本体内部機構をハワイ大学の実験モデルを参考に改造して即物的に確かめる方法について検討する。洋上において台船上の改造作業が難しいので、計算モデルを検討して試算する。

以上の確認を行って課題の解決を進めながら、より確かな洋上設置型海洋深層水取水装置開発を目指して行くことが望まれる。

 

 

 

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