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中国の教育(専家局・李躍民)

 

1995年5月

李躍民

 

1. 中国の教育の現状

 

まだまだの教育状況

中国は1978年から改革・開放政策を採り、教育の面でも著しい発展を示してきた。中国の人口は12億を超えているが、在学中の学生・生徒数は既に3億2000万人を超え、総人口の26%に達している。総人口のうちから、15歳以上の者でみると、平均約7年間の教育期間があり、これは改革・開放前の状況と比校すると、大幅な前進といえる。

しかしながら、成人のなかの文盲が、まだ1億4500万人もいて、中国の教育はまだまだ、おおきな任務を負っていると言わざるをえない。

中国の小・中学校での教育は、かなり普及してきたが、これを入学率でみると、小学校98%、中学校82%、高校31%、大学7%となっている。

成人向けの大学や私立大学を除く、中国の正式な大学の数は、日本の大学数とほぼ同じだが、中国の人口は日本の約10倍であることを考えると、中国で大学に入るのがいかに困難であるかがわかると思う。

 

忙しい生徒たち

いま仮に、日本で「一番忙しい学生(生徒)は?」と質問しても「それは小学生だ」という答えは返ってこないだろう。しかし、中国で同じ質問を発すると、「小学生」と答える人もいる。

ご承知のとおり、中国は「ひとりっ子政策」をとっており、そのため中国の親たちは、子供の教育を非常に重視している。将来、子供を一流の大学に入れるため、子供が幼稚園の時代からいろいろと勉強させ、いい小学校へ入れようと腐心する。重点小学校(中国では小・中・高・大に『重点学校』があり、とくに優秀な者を集め、教育内容も高いとされている。しかし、弊害も多く、近く小・中段階では、この『重点』が撤廃される方向にある。)へ入れるために教育の助成金という名目で、何万元というお金を、学校へ払った人もいる。

子供たちこそ大変である。

いい小学校からいい中学校、そして高校、大学へすすむために、学校で学ぶだけでなく帰宅しても沢山の宿題をこなし、そのあとは英語、数学、バイオリンやピアノの学習や練習のため、塾に行ったり、家庭教師に就いたり、土曜・日曜も休めない生活に追われている。成績が良くないと、この進路も危ないからである。

大学卒でないと、収入の多い安定した就職が望めない中国の社会のなかで、親たちも必死なら、追い立てられる子供たちも可哀そうである。

 

 

 

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